【3月12日 AFP】最初のモデルが出荷されてから70年、ヒッピー文化の象徴だった「ワーゲンバス」が、環境意識の高い世代に向けて電気自動車(EV)として復活した。

 独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は今週、EV市場に攻勢をかける主力シリーズ「ID.」の新型モデル「ID.Buzz」を公開した。往時のワーゲンバスをほうふつとさせるミニバンだ。

 VWの古典ともいえるワーゲンバスのデザインは、オランダ人の輸入業者だったベン・ポン(Ben Pon)氏の着想だった。1947年、独ボルフスブルク(Wolfsburg)のVW工場を訪れた同氏は、従業員が製作した運搬車に目がくぎ付けになった。

 丸みを帯びたこのミニバンはとりわけ米国で、ヒッピー世代の自由な思想のシンボルとして人気を集め、カリフォルニアのサーファーたちに大いに愛用された。

 ドイツの自動車専門家、フェルディナンド・デューデンホッファー(Ferdinand Dudenhoeffer)氏によると、VWは昔のワーゲンバスのポジティブなイメージにあやかることを期待しているという。

「フラワーパワー運動の歴史に貢献した」ワーゲンバスの現代版は、気候変動対策を求める運動「フライデーズ・フォー・フューチャー(Fridays For Future、未来のための金曜日)」世代の車であり、「気候危機ヒッピー」のための車だと同氏はいう。

 だが、往年のワーゲンバスの愛好者から、新たなEVモデルへの支持を取り付けるのは、そう簡単ではないかもしれない。

 ワーゲンバスが象徴した「自由と独立」の精神は、充電が必要なEV車がもたらす束縛と相いれない。

 ワーゲンバスを4台所有し、欧州横断もしたことがあるというローランド・グレーブナー(Roland Graebner)さん(52)は、「周りに何もない美しい場所で一夜を過ごすとき、すぐに行ける充電スタンドなんて、今後20年たっても整備されないでしょう」と語る。

 また、70年代後半からワーゲンバスを所有しているというハンス・トマ(Hans Toma)さん(62)も「ID.Buzz」でできる冒険は「違うものになるはずです」と話した。(c)AFP/Yann SCHREIBER