【3月10日 AFP】カナダ軍の歩兵だったハンター・フランシス(Hunter Francis)さん(24)は、ウクライナに縁もゆかりもない。だが、ロシア軍の砲撃を受けたウクライナの住宅地を見て戦いに加わることを決め、欧州に向かった。

 フランシスさんは、ニューブランズウィック(New Brunswick)州の先住民居住区イールグラウンド・ファースト・ネーション(Eel Ground First Nation)出身で、犯罪学を学ぶ学生だった。

「決断というほどのものではない。正しいことをやるだけだ」とAFPに話した。「他国に全面侵攻するなんて、21世紀に起こってはならない」

 友人や家族、特に母親は、ウクライナ行きにショックを受けたという。

「自分から進んで戦場に行くなんて正気じゃないとみんなに言われた」とフランシスさんは落ち着いた口調で話す。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、外国人の志願者から成る「国際部隊」を編成すると発表し、世界中に参加を呼び掛けた。

 ドミトロ・クレバ(Dmytro Kuleba)外相によると、6日までに各国から約2万人が集まり、戦闘に参加している。

「もしカナダが攻撃され、みんなから見捨てられ、孤立したらどうなるだろう。助けが欲しいと自分だったら思う」とフランシスさんは語った。

 リュックサックに防弾チョッキ、防音用マフ、サバイバルキットなどを詰め込み、故郷から6000キロ近く離れたポーランドの首都ワルシャワに飛んだ。

「財布には祖母の遺灰が少し入った小瓶を入れている。いつも欧州に行きたいと言っていたから」

 ワルシャワでは、交換留学でカナダに来ていた高校時代の友人の助けを借りた。ホテルを予約してくれたり、途中まで車で送ってくれたりした。

 国境を越えると、ウクライナの腕章と武器が供与される予定だ。

「アフガニスタンに派遣されなかったので、正式な戦闘経験はない。でも、訓練をたくさん受けた。それを生かせればと思う」

 フランシスさんは、外国人義勇兵の存在はそれだけで士気を高めると考えている。緊張しているが怖くはないという。

「これは戦争だ。撃たれたらその時だ」「自分が何に首を突っ込んでいるのかは分かっている。でも、技能があると自分でも分かっていながら、フェイスブック(Facebook)に投稿される戦況をくつろぎながら見て、何もしないでいるなんてできない」

 自分のような西側諸国の兵士は、ロシア軍の標的にされ、捕らえられればプロパガンダに利用される可能性も分かっている。

 しかし、「ロシア兵に怒りは感じていない。彼らもそこにいたいと思っているわけではないだろう」と言う。

「誰もこの戦争を望んでいない。誰も何かを得ることなどない」 (c)AFP/Anna Maria