【3月6日 AFP】南米ボリビア西部の高地にあるオルロ(Oruro)では毎年、鉱山労働者が集まり、「エルティオ(El Tio)」にいけにえをささげる儀式を行う。

 エルティオとは、アンデス山脈(Andes)中に広がる高原の地下世界をつかさどる神の名。供え物はワインにビール、コカの葉に5頭の白いリャマだ。

 エルティオはキリスト教の悪魔にも似て、堂々とした角を生やし、ヤギのような耳を持ち、口にはたいてい火の付いたたばこをくわえている。

 2月に行われたいけにえをささげる儀式で、鉱山労働者のミゲル・バルデス(Miguel Valdez)さん(23)は「エルティオがおとなしく眠っているように、私たちが(鉱山で)事故に遭わないように、供え物をささげます」と語った。

 いけにえの儀式に先立ち、集まった労働者はトランペットやドラム、シンバルの音に合わせて踊り、ビールをラッパ飲みする。時に大地の女神「パチャママ(Pachamama)」のためにビールを振りまくこともある。

 儀式は正午に始まり、ヤティリと呼ばれるアンデスのヒーラーが刃物をふるう。労働者らは器を持ってしゃがみ込み、リャマの血を受けようとする。中には、リャマの血を顔に塗る人もいる。

 選ばれた数人が、血でいっぱいになった鉢を鉱山の地下深くまで運び、エルティオの前に供える。いけにえの儀式が終わると、労働者らは用意したテーブルに並べた他の供え物に火を付け、坑道に煙が充満する前に急いで脱出する。

 この儀式は毎年2月か3月の初め、オルロで謝肉祭(カーニバル)のパレードがある前日に行われる。オルロのカーニバルはボリビア最大規模の祭りの一つで、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている。(c)AFP/Martín SILVA