【3月5日 People’s Daily】アルペンスキーは速度と技術が融合した競技であり、選手の最高時速は140キロメートルにも達する。国際スキー連盟の規定によると、競技時に選手が転倒・負傷した場合、医療班が必ず4分以内に現場に到着し、診察・救急・搬送を行う。北京冬季五輪を開催する以前には、中国には冬季オリンピックの基準を満たすサーキットがなく、専門の医療もなかった。

 2018年1月、北京2022冬季オリンピック・パラリンピック組織委員会(BOCOG)が北京・河北省(Hebei)周辺の医療関係者のスキー技能試験を行い、45か所の医療施設232人の医療スタッフが技能を披露した。白鵬(Bai Peng)さんは70人の医療関係者と共に試験をパスし、中国初の冬季オリンピックスキー医療班の一員となった。

 白鵬さんは北京大学第3医院麻酔科の若手医師で、スキーが趣味だった。長年、彼は中国国内大小のスキー場に通いつめ、趣味が高じてカナダスキー指導員連盟2級指導員および中国国家職業資格社会体育指導員(スキー)の資格も取った。

 白鵬さんは北京大学第3医院スキー協会の一員である。北京大学第3医院延慶医院執行院長である周方(Zhou Fang)さんの指導下で、協会組織は多くのスキー現場で医療救援講座と救援演習を重ね、第1回冬季スポーツ損傷救護シンポジウムを開いた。

 スキーはバランスが大事である。スキー板をつけて10キロ以上の救援バッグとAEDを背負い、胸に薬や注射を装備してバランスをとるのは容易ではない。転んでけがをするのは日常茶飯事で、骨折をしたり、関節や靱帯(じんたい)を痛めたりする隊員もいる。

 サーキットでの救急活動はさらに難しく、高低差や寒さ、険しい地形、変わりやすい風向きなど、医療救援作業への障害が多い。氷点下20~30度のスキー場で、隊員たちは傾斜がある雪上での心臓マッサージや気管への挿管などの救命措置を練習した。隊員たちは厳しい雪上訓練の後、へとへとになりながら夜間の座学も受けた。

 障がい者アスリートの救助には、運動設備やけがの種類はもちろん、検査などにおいても特殊性がある。「例えば、足に障がいがある選手の使うチェアスキーをどう処理していいのか、全く経験がありませんでした」と、白鵬さんは語る。隊員たちは障がい者アスリートがサーキット内でけがをした場合の有効な処置方法とフローチャートを模索していった。

「趣味がこんな役に立つとは思いませんでした。つらくて疲れましたが、その価値はありました」と、白鵬さんは誇らしげに語った。集中訓練以外にも、時間をつくってはスキー場で訓練を重ねたという。

 3回のスキーシーズンを経て、スキー医療班は国際スキー連盟公認の医療班として認められ、2020年の第14回全国冬季スポーツ大会をはじめとする一連の冬季スポーツイベントでも任務にあたった。北京2022冬季オリンピック・パラリンピック大会でも大活躍している。(c)People’s Daily/AFPBB News