【3月6日 AFP】アフリカの半乾燥地域サヘル(Sahel)に位置するマリ中部の住民は、誰もが暴力に囲まれた生活を送っている。AFPは1年半以上にわたり、紛争や民族間の対立に巻き込まれ、人生が一変した人々にインタビューを行ってきた。

 民族同士の殺し合い、報復の応酬、兵士や警察への容赦のない攻撃。マリ中部に暴力がまん延するようになったのは2015年。扇動的な説教師アマドゥ・クーファ(Amadou Koufa)師が、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系のイスラム過激派組織を設立してからだ。クーファ師が自らの出身である半遊牧民フラニ(Fulani)人に参加を募ったため、他民族がフラニ人を警戒。民族間抗争に発展した。

 インタビューは首都バマコなど都市部の3か所で行われたが、安全を守るため仮名にしてある。

■自衛の民兵組織

 さまざまな民族が共存しているマリ中部では民族間の憎悪と不信が高まり、これまでに20万近い人々が避難民となり、数千人が殺害されている。

 50がらみの女性ロキアさんは、遊牧民のボゾ(Bozo)人だ。親族で漁業を営んでいた。2018年、ニジェール川(Niger River)でイスラム過激派組織の戦闘員に行く手を阻まれ、夫と自身の兄弟2人、息子2人を含め、船に乗っていた親族全員が連れ去られた。

「ずっとまともに寝ていません。生きていることに意味がなくなりました」とロキアさんは言う。「いろいろなことが、どうでもよくなりました」

 自衛のための民兵組織を結成した人々もいる。伝統的な狩猟民ドゴン(Dogon)人が立ち上げた「ダン・ナン・アンバサグー(Dan Nan Ambassagou)」もそうだ。

 40代のジョルジュさんは、イスラム過激派組織の戦闘員が村にやって来た時にドゴン人の民兵組織に加わった。

「長男として、お守りと父親の猟銃を譲り受けました。責任がのしかかり、戦闘に参加しなければなりませんでした」と言う。

 非政府組織や国連(UN)はダン・ナン・アンバサグーがフラニ人の村で虐殺を行っていると非難しているが、本人たちは否定している。