【2月23日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は21日、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認し、同地域への派兵を命じた。これを受け、識者の間では、ロシアが同地域を越えた侵攻を準備しているかどうかをめぐり、見解が割れている。

 プーチン氏は熱のこもった演説で、ウクライナの独立国家としての権限に疑念を呈し、同国政府の正統性をあざけり、さらには同国は核兵器の保有を目指していると非難。今後起こり得る流血の事態の「全責任」はウクライナ政府が負うことになると強く警告した。

 以下に、ロシアがウクライナで検討している可能性のある筋書きをまとめた。

■全面侵攻

 ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は、プーチン氏の演説について「全面的な攻撃の口実を作っている」と指摘。北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長も、ロシアがウクライナに対する全面的な攻撃を今も計画していることが「あらゆる面から示されている」と述べた。

 ロシアはここ数週間で、ウクライナ国境付近に約15万人の部隊を集結させている。プーチン氏がここまで大規模な動きに出たのは、単に親ロ派支配地域を承認することが目的だったわけではないと分析する識者もいる。

 米シンクタンク、海軍分析センター(CNA)のロシア研究部門トップで、これまでにもロシアの大規模な侵攻を予想してきたマイケル・コフマン(Michael Kofman)氏は、今回の動きについて「政権交代を強いることを目的としたロシアの大規模な軍事作戦の第一歩だ」との見方を示した。

■現状維持

 ロシアは、ウクライナの首都キエフへの侵攻は政治的にも軍事的にもリスクが高すぎると考えるかもしれない。ただ、より限定的ながらも流血を伴う侵攻を選ぶ可能性もある。

 ウクライナ東部で独立を宣言した親ロ派武装勢力「ドネツク人民共和国(DNR)」と「ルガンスク人民共和国(LNR)」は、ドネツク、ルガンスク両州の全体は支配していないが、領有を主張している。ロシアは武力によって両地域からウクライナ政府を排除しようとする可能性があり、プーチン氏がDNRとLNRの領土をどの範囲まで認めているかがカギとなる。

 また、南方の港湾都市マリウポリ(Mariupol)に進軍し、2014年に併合したウクライナ南部クリミア(Crimea)半島への陸路の確保を試みる可能性もある。同半島とロシア本土は現在、橋でしかつながっていない。

 英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)でロシア政治を研究するサム・グリーン(Sam Greene)教授は「プーチン氏は情勢の深刻化を回避するため、現行の支配線にとどまり、現状を固定するつもりだ」と予測。「ただし、圧力をかけ続けるため、さらなる進軍の余地も残しておくだろう」と分析した。(c)AFP/Stuart WILLIAMS