【2月19日 AFP】ドーピング問題で厳しい視線を浴びているロシア五輪委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ(Kamila Valieva)は、17日に行われた北京冬季五輪のフィギュアスケート女子シングル・フリースケーティング(FS)で失意の4位に終わった。ワリエワの五輪はこれで終了したが、騒動は終わっていない。

 五輪開幕の1週間後、15歳のワリエワは昨年12月の検査でトリメタジジン(Trimetazidine)に陽性反応を示したことが発覚した。トリメタジジンは狭心症の治療薬で、血流を促進して持久力を高める効果があることから禁止薬物に指定されている。

 スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、ワリエワの五輪出場継続を認める裁定を下した。しかし、これでドーピング疑惑が晴れたわけではなく、後日処分を受ける可能性もある。

 そこでAFPは、考えられる今後のシナリオをまとめた。

■メダルはなしか?

 国際オリンピック委員会(IOC)は、女子シングルでワリエワが上位3人に入った場合、メダル授与式は行わないと発表していた。

 結局、ワリエワが表彰台を逃してその可能性はなくなったが、ワリエワがROCの金メダル獲得に貢献した団体戦の順位に関してはまだ問題が残っている。

 団体戦のメダル授与式はまだ行われておらず、IOCはワリエワが世界反ドーピング機関(WADA)のドーピング防止規程(WADA Code)に違反していたかどうかを判断する「適正な手続き」が行われるまで、順位を確定しないとしている。

 ワリエワの違反が確定したとして、ROCが団体戦で失格になるかどうかは不明だ。

 国際スケート連盟(ISU)の規則では、大会期間中のドーピング検査で違反が確認された場合、チーム全体が失格になると定められている。だが今回のケースはこれに当てはまらない。

■全プロセスには「数年」かかる可能性

 ロシア反ドーピング機関(RUSADA)は当初、検査で失格となったワリエワの資格を停止したが、翌日には処分を解除した。その根拠については明らかにされていない。

 ワリエワに反ドーピング規則違反があったかどうか、RUSADAの調査は現在も続いている。

 CASの聴聞会で、ワリエワは体内にトリメタジジンが入っていた理由について、祖父の服用する治療薬が「混入」したためと説明。祖父と同じ皿かグラスを使ったことが原因かもしれないと主張した。

 RUSADAが最終的に下す決定には、WADAとISUがCASに不服を申し立てることができる。

 米国反ドーピング機関(USADA)の元相談役であるビル・ボック(Bill Bock)氏は、AFPの取材に対し、この問題の終結には最低でも半年から1年はかかるだろうと話した。

 カナダのシェルブルック大学(University of Sherbrooke)の法学教授で、反ドーピングの専門家でもあるデビッド・パボット(David Pavot)氏は、「今回の件が、CASの裁定に関して最終的な判断権限のあるスイス連邦裁判所まで持ち込まれれば、数年はかかるだろう」と述べた。