【2月19日 AFP】サウジアラビア南西部ジザン(Jizan)に住むファラ・マルキ(Farah al-Malki)さん(90)にとって、コーヒー栽培は単なる仕事ではない。代々受け継がれてきた家業だ。

 コーヒーは15世紀ごろ、エチオピアからイエメンに渡り、そこから中東一帯に広まった。

「父が祖父たちから受け継いだものを私が受け継ぎ、息子や孫たちに伝えてきました」。マルキさんは、コーヒー農園で木を剪定(せんてい)する親族の男性たちを眺めながらAFPに語った。

 ジザンは、ハウラニ(Khawlani)種という赤いコーヒー豆の産地として知られる。カルダモンやサフランなどを加えて煮出す黄色みを帯びたコーヒー(地元では「ガワ(ghawa)」と呼ばれている)は独特の風味がする。

 サウジアラビア政府は今年を「サウジコーヒーの年」と定め、普及活動を開始。すべてのレストランやカフェに、アラビアコーヒーではなく「サウジコーヒー」の名称を使うよう指示した。

 昨年末の時点で、国内にあるコーヒー農園は約600か所、コーヒーの木は40万本。豆の年間生産量は約800トンに上った。さらに政府は、ハウラニ種の木を2025年までに120万本植える計画を進めている。

 マルキさんの9人の息子は、それぞれ農園、梱包(こんぽう)、流通、マーケティングなどの分野でコーヒー産業に携わっている。

 父と同じく伝統的な農作業服姿に花かんむりをかぶり、毎日農園で働くアハメドさん(42)は、ハウラニ種のコーヒー豆については熟知していると話す。「どの農園も有機栽培で、化学物質は一切使用していません」

 ハウラニコーヒーの豆の年間生産量は約2.5トン。1キロ当たり27〜40ドル(約3100〜4600円)で販売されている。

 サウジアラビアはハウラニコーヒーの栽培について、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産への登録を目指している。

 実現すれば夢のような話だとアハメドさんは言う。「自分の息子やその息子たちにハウラニコーヒーを伝え、生活の糧としてくれることを願っています」

 映像は1月26日撮影。(c)AFP/Haitham El-Tabei