【2月17日 AFP】ウクライナ南東部の村に住むミハイロ・アノパ(Mykhailo Anopa)さん(15)は、ロシアが本格的な攻撃を仕掛けてくる事態を恐れ、眠れない夜を過ごしていた。そして、行動を起こすことにした。

 アゾフ海(Sea of Azov)沿岸のチェルボネ(Chervone)村。アノパさんは、問題を抱える家庭の少年たちと共に、親ロシア派が実効支配する東部で戦うウクライナ兵のために、塹壕(ざんごう)を掘り始めたのだ。

「ロシアが攻撃してくるかもしれないと牧師から聞き、悪夢を見るようになった」アノパさん。「今はウクライナ兵を助けるために塹壕を掘っている。僕たちの使命になった」と、誇らしげに話した。

 ウクライナでは2014年、ロシアが支援する大統領が親欧州連合(EU)派によって退陣に追い込まれて以来、ロシア語話者が多数を占める東部の情勢は悪化の一途をたどっている。

 東部2州は政府軍と親ロシア派武装勢力との戦闘の舞台となり、これまでに1万4000人以上が死亡、150万人が避難を余儀なくされた。経済も大きな打撃を受けている。

 現在は、北大西洋条約機構(NATO)拡大をめぐるロシアと西側諸国との対立から、ロシアによる侵攻への懸念が高まっている。

 アノパさんは、ペンテコステ派教会のゲンナジー・モフネンコ(Gennadiy Mokhnenko)牧師(53)が監督する、問題がある家庭出身の子どものための施設に所属している。

 モフネンコ牧師は、40人ほどの少年たちに規律と塹壕の掘り方を指導している。全員で祈りを終えると、少年たちに「きょうは地下室部分を補強する予定だ」と伝えた。「事態は深刻」だが、「(戦争への)準備は整うだろう」と、重々しく語りかけた。

 チェルボネ村では2018年11月、小規模な衝突を契機に初めて塹壕が掘られた。

 牧師や少年が活動する場所からは、アゾフ海が見渡せる。晴れた日には、以前に比べ多くなったロシアの軍艦が行き来するのが見える。

 モフネンコ牧師は、少年たちは塹壕掘りなど建設的なことをしていると感じるときは生き生きとしていると話す。

「笑ったり遊んだりもする」とモフネンコ牧師。「ただ心の奥には強い恐怖が宿っている。少年たちは生きてきた大半の時間を兵士の背中を見て過ごしてきた。そして窓の外に広がっているのは前線なのだ」 (c)AFP/Yulia Silina