【2月20日 AFP】イラク全土にはかつての独裁者、故サダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領が建てた豪華な宮殿や別荘が点在している。その数は100を優に超えるが、中には廃虚と化しているものも少なくない。

 古都バビロン(Babylon)にある邸宅の外壁には、フセイン元大統領が崇拝した、メソポタミア文明の王国・新バビロニアの王、ネブカドネザル2世(Nebuchadnezzar II)さながらのレリーフがある。

 2003年に米軍主導の侵攻で政権を打倒され、同年に身柄を拘束。2006年に処刑されたフセイン元大統領。ある州政府の高官によると、イラク国内に残された邸宅や別荘などは計166か所に上る。

 所有していた宮殿のほとんどは、侵攻時の混乱で略奪の標的にされた。生まれ変わって活用されているものはわずかしかない。

 問題の一つにコストがある。イラク考古遺産庁のライス・マジド・フセイン(Laith Majid Hussein)長官は、「巨大な城の数々」を修復するには莫大(ばくだい)な金額が必要だと話す。

 首都バグダッドには現在、大統領府および首相府が入っている宮殿が三つある。

 人造湖に囲まれた豪華なアル・ファウ(Al-Faw)宮殿は昨年から、イラク人投資家が設立した私大のアメリカン大学(American University)の校舎となっている。大理石などを材料に建てられた校舎には、講堂や円形劇場、フードコートなどが置かれている。

 南部バスラ(Basra)にも、三つの宮殿が残されている。うち2か所は、現在イラク軍に統合されている親イラン武装勢力の連合体「人民動員隊(Hashed al-Shaabi)」が使用している。残りの一つは考古学博物館となっている。

 これら豪邸を飾る大理石の柱、凝った彫刻、派手な調度品などは、フセイン元大統領の権力欲と誇大妄想を映し出している。だが中には1、2度しか訪問されなかったものもある。(c)AFP/Ammar Karim