■デザイナーの間に広がり始めたアップサイクリング

 デザイナーの間では、処分された素材や余った素材を再利用する動きも始まっている。アップサイクリングと呼ばれる方法だ。

 以前なら、デザイナーは独創的なアイデアを実現するために素材を探し回ったとLVMHのバラド氏は言う。だが今では創作のプロセスが逆転し、過去のコレクションで使われた素材や余った未使用の生地、革の切れ端など手近にある素材に触発されて、制作を始めるケースもあるという。

 ルイ・ヴィトンのデザイナーで、昨年死去したヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)氏もそうだった。

「マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)」は米ニューヨークで、繊維製品専門のリサイクルショップ「ファブスクラップ(Fabscrap)」と協力している。同社は未使用の生地を、断熱材や家具の内張りに再利用している。また学生やアーティストの制作用に生地の寄付も行っている。

 LVMHグループも、売れ残った衣類や素材を集め、新しい糸や生地にリサイクルするスタートアップ企業「ウィーターン(WeTurn)」と提携している。

「廃棄処分が最も多いのは衣類や皮革製品、そして化粧品です」と、パリの資産運用会社「フローノア(Flornoy)」でポートフォリオ・マネジャーを務めるアルノー・カダール(Arnaud Cadart)氏は指摘する。

 だが、これまでの取り組みや現在の景気の後押しもあり、高級ブランドの商品は売れ残るよりも在庫切れになることが増えている。

「2014年以来、エルメス(Hermes)では廃棄した商品はほとんどありません」とカダール氏は言う。「何でも飛ぶように売れています」 (c)AFP/Katell PRIGENT