■インスピレーション、それとも完全な模倣?

 昨年10月、レシピをめぐるスキャンダルが料理界を揺るがした。シンガポールのシェフで文筆家のシャロン・ウィー(Sharon Wee)氏が、同業のエリザベス・へイグ(Elizabeth Haigh)氏を訴えたのだ。

 ヘイグ氏は、ウィー氏が母親と作った郷土料理のレシピをまとめた『Growing Up in a Nonya Kitchen(ニョニャ料理のキッチンで育つ)』(2012年)の内容を「模倣したり言い換えたり」して、自著に載せたとされる。

 ウィー氏はこの件で「とても心を痛めた」と言う。最終的にヘイグ氏の著書『マカン(Makan、食べるの意)』は販売中止となり回収された。

 しかし食の世界では、古典的なレシピの焼き直しは当たり前だ。では、他の料理人の仕事からインスピレーションを受けることと盗作の境目はどこにあるのか。

 フランスでは1980年代、著名シェフ、ジャック・マキシマン(Jacques Maximin)氏が法律の抜け穴をふさぐために、創作料理を守る団体を立ち上げようとした。しかし、このアイデアは一流シェフたちから猛反発を受けた。

 伝説的なシェフ、ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)氏は、シェフは誰でも「他人からインスピレーションを受ける」もので、マキシマン氏のアイデアには「当惑した」と語っていたとされる。そして自身の代表的な料理の一つは、仏南部のアルデシュ渓谷(Lower Ardeche)に住む「ある老人」から「盗んだ」ものだとも明かした。

 この問題をめぐっては、いまだに大きく意見が分かれている。

 一部の食に関するブログに対しては、盗用をやめ、他の料理人の創作であることを明記するよう要請されている。

 マルジエリ氏は「インターネットは盗用を競争のようにしてしまいました」と語る。レシピによっては「20や30」のブログで同じものが見つかると述べた。(c)AFP/Léa DAUPLE