【2月9日 AFP】メキシコの男子フィギュアスケート選手ドノバン・カリジョ(Donovan Carrillo)は、ショッピングモールの中にあるアイスリンクで練習をしている。フィギュアスケートを始めたきっかけも、女の子の気を引くことだった。

 それでもカリジョは、メキシコの選手としては30年ぶりに五輪フィギュアの出場権を勝ち取ると、8日に行われた北京冬季五輪の男子シングル・ショートプログラム(SP)では、同国の選手として初めてフリースケーティング(FS)に進出した。しかもその過程を大いに楽しみ、SPでは陽気な演技で自己ベストをマークした。

「これで終わりたくなかった」とカリジョ。「もっと滑りたかったし、五輪という夢から覚めたくなかった」と話した。

 8歳のときにフィギュアを始めた理由は、女の子にアピールすることだったが、そこからカリジョは競技に没頭した。そして22歳となった今、五輪に出場するという夢をかなえた。

「フィギュアを始めたばかりの頃は、大勢の人からばかげた夢だと言われた。いつも笑われ、メキシコ人が予選を突破するなんて不可能だと言われた」

「僕はそんな考え方はしたくなかったし、常に努力しようとしてきた」

 今大会では、普段練習しているショッピングモールのリンクが五輪規格とは異なるため、サイズに慣れる必要があった。というより、メキシコに五輪規格のリンクは一つもない。カリジョも「正直に言って、難しい部分だ」と話す。

 母国で一緒に練習するのは、ほとんどが11歳から14歳の女子選手で、実力は初級から中級。それでもカリジョは「いつも与えられた環境で何とかしようとしているし、それがここへ来られた理由だと思う」と明るく振る舞う。練習環境を変えるつもりもないという。(c)AFP/Rebecca BAILEY