【2月8日 AFP】カルト的人気を誇る米映画『ファイト・クラブ(Fight Club)』のエンディングが中国でのオンライン配信時に検閲を受け、犯罪者が全員逮捕される形に変わり批判を呼んでいた問題で、結末をオリジナル版に戻したバージョンの配信が同国で始まった。

 中国の検閲は世界でも特に厳しく、外国映画の公開は年間数作しか許可されず、内容が大幅にカットされることもあるが、エンディングの改変は珍しい。騰訊視頻(テンセントビデオ、Tencent Video)のストリーミングサービスで配信された『ファイト・クラブ』のエンディング改変に対しては、怒りの声が広がっていた。

 オリジナル版では、エドワード・ノートン(Edward Norton)さんが演じる主人公が、自身の想像上の分身であるブラッド・ピット(Brad Pitt)さんが演じるタイラー・ダーデンを殺し、ビルが爆破される様子を眺める場面で終わる。この場面は、主人公が目指していた近代文明の破壊を示唆している。

 だが中国版ではビルの爆破シーンはなく、代わりに黒い画面に「警察は迅速に計画の全貌を突き止め、犯罪者全員を逮捕し、爆発を未然に防ぐことに成功した」というメッセージが流れる。中国の視聴者の多くはすでにオリジナル版を海賊版で見たことがあったとみられ、国家の勝利で終わる新バージョンに怒りの声を上げていた。

 しかしテンセントは今週、爆破シーンを含むオリジナル版エンディングの配信を始めた。中国でこうした検閲が撤回されるのは異例で、ネット上では議論がさらに白熱した。1996年作の原作小説の著者チャック・パラニューク(Chuck Palahniuk)氏はツイッター(Twitter)に、中国は「正しいことをした」と投稿。テンセントは、検閲とその撤回に関する質問に回答していない。(c)AFP