【2月7日 AFP】英スコットランド南西部の港湾都市エアー(Ayr)近郊の工場で、ジェームズ・ワイリー(James Wyllie)氏(72)は慎重にストーン(石)を持ち上げ、その表面をなでた。後ろでは、よく使い込まれたドリルや研磨機が音を立てている。

 重さ約18キロのストーンは、スコットランド本土から西へ16キロほど離れたところにぽつんとある火山島、アルサクレイグ(Ailsa Craig)島で採石される花こう岩でできている。

 カーリング競技の発祥は約500年前、スコットランドの池や湖の氷上で競われたことが始まりとされている。

 ワイリー氏は1851年からカーリング用のストーンを製造している企業、ケイズカーリング(Kays Curling)の元オーナーだ。同社はアルサクレイグ島の花こう岩の独占採掘権を持っている。

 北京冬季五輪のカーリング競技で使用されるストーンはすべて、エアー市郊外約20キロのモシュリン(Mauchline)にあるこの工場で製造されたものだ。

「カーリング用のストーンとして(アルサクレイグ産に)匹敵する花こう岩は、世界中のどこにもありません」とワイリー氏はAFPに語った。「他にも名乗りを上げた花こう岩の産地が1、2か所ありましたが、出来はまちまちでした。良質なアルサクレイグ島のストーンには全然及ばなかったのです」

 ケイズカーリングは、1924年に仏シャモニー(Chamonix)で開かれた第1回大会から、冬季五輪で使用されるストーンを提供してきた。

 アルサクレイグ島では、ストーンに最適な2種類の花こう岩が採れる。一つは6000年前の火山噴火によって形成された「ブルーホーン(Blue Hone)」と呼ばれる花こう岩だ。粒子が微細で密度が高く、吸水性が低い。そのため、氷上でストーンに染み込んだ水分が再び氷結してストーン自体がもろくなることもない。

 一方、「コモングリーン(Common Green)」と呼ばれる種類の花こう岩は、熱伝導率が低く、結露が生じにくい。また競技中、他のストーンと衝突しても割れにくい。

 五輪のカーリングのストーンは、ボディーにアルサクレイグ産のコモングリーンが使われ、氷との接触面に同じくアイサクレイグ産のブルーホーンが取り付けられている。