【2月4日 AFP】(更新)ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は3日、米軍の特殊部隊が2日夜にシリア北西部イドリブ(Idlib)県で実行した急襲作戦で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」最高指導者のアブイブラヒム・ハシミ・クラシ(Abu Ibrahim al-Hashimi al-Quraishi)容疑者が自爆して死亡したと発表した。

 バイデン氏は、ホワイトハウス(White House)で演説し、クラシ容疑者の死亡により「世界にとって大きなテロの脅威が排除」されたと指摘。ヘリコプターを使い夜間に行われた作戦は「非常に困難」なものだったと説明した。

 クラシ容疑者は、イドリブ県アトメ(Atme)の家屋に滞在していた。子どもを含む家族も一緒だった。バイデン氏は、特殊部隊が接近した際、同容疑者は「家族や建物内の他の住人の命を顧みず、臆病な捨て身の試みとして、自爆を選んだ」と語った。自爆に伴い建物の3階部分が崩壊し、「複数の家族が道連れ」になったという。

 バイデン氏は、空爆ではなく、特殊部隊の投入を選択したことについて「隊員へのリスクは大きかった」ものの、民間人の犠牲を最小限に抑えるために必要だったと述べた。

 米政府はクラシ容疑者について、所在の判明につながる情報に1000万ドル(約11億円)の報奨金を出すとしていた。

 在英NGOのシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は、今回の作戦で民間人を含む少なくとも13人が死亡したと報告。うち4人は子ども、3人は女性としている。

 米部隊側に犠牲者は出なかったが、米高官によると、使用されたヘリコプターのうちの1機が故障したため、破壊する措置が取られた。シリア北部アレッポ(Aleppo)県で、焼け焦げたヘリの残骸が撮影されている。

 AFP取材班は現場を訪れ、建物の所有者に話を聞いた。クラシ容疑者は、今回の襲撃で身元が明らかになるまで、入居者として日常生活を送っていたという。「11か月間ここに住んでいた。怪しいものは何も見なかったし、特に何も気付かなかった」

 コンクリート製の建物には、激しい戦闘の跡が残っていた。窓枠は外れ、天井は焼け焦げ、屋根の一部は崩落。屋内では壁や床に血が飛び散り、マットレスや扉の破片などが散乱していた。

 米国は2019年、同じくイドリブ県で行った急襲作戦により、ISの前最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者を殺害しており、今回の作戦はISにとってそれ以来最大の痛手となった。(c)AFP/Aaref Watad with Sebastian Smith in Washington