【2月1日 AFP】ミャンマーで軍がクーデターを起こしてから1日、1年を迎えた。反クーデターデモの参加者を撃たないようひざまずいて警官に懇願した修道女、アンローズ・ヌトーン(Ann Rose Nu Tawng)さんはAFPのインタビューに対し、当時のことを思い出すと今でも体が震えると語った。

 北部カチン(Kachin)州ミッチーナ(Myitkyina)で、カトリックの修道女が警官にひざまずき、両手を広げて発砲しないよう懇願する様子を捉えた写真は世界中に拡散された。

 写真が撮影された昨年3月、カチン州ではデモ参加者2人が射殺された。ヌトーンさんはけがをした子どもを病院へ運んだこともある。

 混乱の中、写真を撮られたことにも気付かなかった。「家に着くと、家族や友人がとても心配していたので気付いた」と話す。母親からはなんて危険なことをしたのかと、涙ながらに怒られた。

「人々が銃撃から逃げ惑っている状況の中で、自分が人々の命を救おうとそこにいたことが信じられない」

 ヌトーンさんは、牧師の父と教師の母の間に生まれた。少数民族武装組織と軍の衝突が長年続いてたカチン州では、軍を避けるのは子どもの頃から常識だった。

 9歳の時には、兵士から逃れるため家族で避難せざるを得なくなった。その際の恐怖感は脳裏に焼き付いており、今の子どもたちも同じような目に遭うのではないかと心配している。

 国内の監視団体によると、軍による弾圧でクーデター以降、市民1500人以上が殺害され、1万人以上が逮捕された。

 ヌトーンさんは、軍に公然と立ち向かった代償を払わされている。治安部隊に何度も拘束され、携帯電話を調べられ、写真を撮られた。

 政治的な活動はしていないが、怖くて一人で外出できない。「もはや自由はない」

 看護師の研修を受けたことがあるヌトーンさんは、現在はカチン州内の国内避難民キャンプで働いている。

 信仰が希望と目的意識を与えてくれると言う。「神の御加護で生きています。私を永遠にお使いになりたいのかもしれません」 (c)AFP