■トランスジェンダー選手に対する差別

 同団体は、トーマスの成績が「性別移行前の男子競技でのベストタイムに近すぎる」とする予備調査の結果に言及している。だがトーマスの支持者は、このような分析は科学的根拠に欠け、トランスジェンダーの選手が受ける差別を助長するだけだと批判している。

 スポーツ界における性的少数者(LGBTQ)の権利団体「アスリート・アライ(Athlete Ally)」は、NCAAの規定変更を受け、「トーマスは、スポーツを愛し、懸命にトレーニングし、水泳競技に参加するためにすべての条件を満たしている一選手にすぎない。だがそれでも、暴力的で虐待的な言葉を浴びている」と表明した。

 保守派が率いるテキサスやフロリダなどの州では、トランスジェンダーの女子が高校スポーツに参加することを禁止する法律が成立している。昨年の東京五輪では、重量挙げのローレル・ハバード(Laurel Hubbard)がトランスジェンダー選手として史上初の五輪出場を果たしたが、トランスジェンダー選手の競技参加をめぐる議論はまだ続いている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は昨年11月、「すべてのスポーツにおいて、テストステロンがパフォーマンスにどのように影響するかについて、科学的な見解の一致は得られていない」として、出場基準の判断は各競技の統括団体に委ねるとした。(c)AFP/Joseph Prezioso, with Andrea Bambino in New York