【1月28日 AFP】イエメン沖に長年放置されている石油貯蔵施設について、国際環境NGOグリーンピース(Greenpeace)は27日、内戦で荒廃し貧困にあえぐ同国民にとって「重大な脅威」であり、人道危機をさらに悪化させる恐れがあると警告した。

 問題になっているのは、45年前に建造されたタンカーを転用した浮体式海洋石油貯蔵積出設備「セイファー(Safer)」。内部には110万バレルの原油が貯蔵されており、イエメンのライフラインとなっている西部ホデイダ(Hodeida)港の約6キロ沖に係留されている。

 グリーンピースは27日に公開した報告書の中で、石油が流出すれば主要なホデイダ港とサリフ(Salif)港が利用できなくなり、最大840万人分の食糧支援が滞る恐れがあると推定。またホデイダ、サリフ、アデン(Aden)の沿岸にある海水淡水化プラントに悪影響が及べば、約1000万人の飲料水供給が阻害されかねないと危機感を示している。

 さらに、イエメンの漁業も停止を余儀なくされる他、紅海(Red Sea)の生態系が壊滅的被害を受け、その影響はジブチ、エリトリア、サウジアラビアにまで広がる恐れがあるという。

 グリーンピースのアフメド・ドルービ(Ahmed El Droubi)氏は、施設は「重大な脅威」だとの認識を示した上で、「大惨事を防ぐための行動、せめて影響を軽減するための行動が直ちに必要だ」と訴えた。

 専門家らは、腐食が進んでいるセイファーは何年もメンテナンスを受けておらず、内部に爆発性ガスがたまっている可能性がある上、電力も稼働する消火システムもないと警告してきた。

 2020年には、国連(UN)の視察団が施設の評価を行う予定だったが、ホデイダ、サリフ両港を含むイエメン北部の大部分を支配する反政府武装組織フーシ派(Huthi)と折り合いがつかず、繰り返し延期されてきた。

 内戦により、イエメン国民は悲惨な暮らしを強いられており、国連は世界最悪の人道危機だと指摘している。(c)AFP