【1月28日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は27日、宇宙開発企業スペースX(SpaceX)の使用済みロケットが3月4日に月に衝突する見通しであることについて、「刺激的な研究機会」だとし、衝突で形成されるクレーターを調査する方針を明らかにした。

 ロケットは2015年、NASAの深宇宙気候観測衛星「DSCOVR(ディスカバー)」を宇宙に運ぶ際に使われた。ロケットは2段式で、2段目が使用済みとなった後、宇宙空間を漂っていた。今年1月、月に接近した後、軌道が変わった。

 NASAの報道官は「現在の軌道を進めば、2段目は2022年3月4日、月の裏側に衝突する見通しだ」とAFPに語った。

 地球からは、衝突の様子をリアルタイムで見ることはできない。NASAの月周回探査衛星「ルナ・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter)」も観測できる地点にはないが、衝突の前後を検証するための画像撮影に使われる可能性がある。

 報道官は「(クレーターを見つけるのは)容易ではなく、数週間から数か月かかるかもしれない」と述べた。

 衝突する2段目の重量は4トン、速度は時速9000キロと分かっており、形成されるクレーターや、衝突によって舞い上がる物質を研究すれば、月の研究に寄与するとみられる。

 科学目的の意図的な月への衝突は過去に例があるが、偶発的な衝突が観測されるのは今回が初めてとなる。

 天体の軌道を計算するソフトを開発した天文学者のビル・グレイ(Bill Gray)氏は、月への衝突は知見を深める機会になるとして、宇宙ごみは可能な限り月を目指すようにするべきだと提言している。(c)AFP