【1月27日 AFP】フランス当局は26日、パリの美術館「グランパレ(Grand Palais)」の10月の使用権入札で、現代美術展「アートバーゼル(Art Basel)」が落札したと発表した。契約期間は7年。グランパレでは50年近くにわたり、国内最大級の国際現代アート見本市「FIAC」が開催されていたことから、仏アート界に衝撃が走っている。

 パリでは美術館が相次いで開館し、ライバルの英ロンドンが欧州連合(EU)離脱したこともあり、「芸術の都」の名を取り戻しつつある。

 グランパレなどの美術館を管理する仏当局は、ギャラリー(画廊)やコレクター、アーティストらからアートフェアの改革を求める声が上がったことを受け、通常FIACが開催されていた10月と別の写真展が開催されていた11月の枠の入札を実施した。アートバーゼルを手掛けるスイス企業MCHが昨年11月、突然10月枠に応札した。

 MCHは、米メディア王ルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏の息子で、富豪の投資家ジェームズ・マードック(James Murdoch)氏が支配株主となっている。

 今回の入札には、マードック氏の強い後押しがあったとされる。

 アートバーゼルのグローバルディレクター、マーク・シュピーグラー(Marc Spiegler)氏はAFPの取材に、「ジェームズ・マードック氏は非常に熱心で、できる限りの支援をするとしている」と話した。

 パリの小規模ギャラリーは、FIACの展示スペースの3分の1ほどを割り当ててもらっていたことから、今回の決定に不安を募らせている。

 地元ギャラリーが加盟する協会の代表は「大手への集中という、フランス以外のアート界でも起きている大きな流れの一環だ」と話した。

 仏当局は、アートバーゼル主催の見本市でも、地元ギャラリー向けの展示ブース価格は「爆発的には上がらない」と約束している。

 グランパレの会場は現在リノベーション中で、2024年の完成までは仮会場で開催される。(c)AFP/Sandra BIFFOT-LACUT