■男性は許されても女性は許されないダブルスタンダード

 動画が拡散された後、ユセフさんが勤務していたマンスーラ(Mansoura)市があるダカリーヤ(Dakahlia)県の教育局は問題を懲戒委員会に委ね、ユセフさんに免職処分を下した。しかしその後、抗議の声が広がると、1月中旬に復職を認めた。

 ユセフさんの夫が動画を見て離婚したことを受け、エジプト人の人気女優、スマヤ・ハシャブ(Sumaya al-Khashab)さんは、男性と女性とでダブルスタンダード(二重基準)があると指摘。

「夫が刑務所に入っても支える女性は大勢いる。夫が悪い状況に置かれても、多くの妻は見捨てないのに」と非難した。

 ユセフさんは、誰が動画をネットに投稿したかは分からないが、誹謗(ひぼう)中傷して家庭を壊した人々には法的措置を取ることを考えているとアルワタン(Al-Watan)紙に話した。

 エジプトで、ネット上のさらし行為に怒りの声が広がったのは今回が初めてではない。

 今月、17歳の女子生徒のデジタル加工した写真をネットにさらして辱め、自殺に追い込んだとして、少年2人が身柄を拘束された。

 2020年には、「社会のモラルに悪影響を及ぼした」として、ソーシャルメディアのインフルエンサーが逮捕される事例が相次いだ。

 世論は変化している。エジプトは昔からベリーダンスの発祥地とされてきたが、ここ数年、ベリーダンサーやポップ歌手の何人かは、オンラインコンテンツが際どいとして、標的にされてきた。

 エジプト生まれのベリーダンサーは減ってきている。主な原因は、この50年で社会の保守化が進み、ダンサーという職業へのイメージが低下し、自由に対する締め付けが強まっていることだ。(c)AFP/Mona Salem