【1月22日 AFP】中国の出稼ぎ労働者ユエさん(44)は今週、新型コロナウイルスに感染し行動履歴から過酷な生活が明らかになり、捜していた行方不明の息子(21)が亡くなっていたことも分かり同情を集めた。

 中国は感染者ゼロを目指す「ゼロコロナ」政策を掲げており、濃厚接触者を追跡しやすくするために詳細を伏せた上で感染者の移動歴を公表している。

 ユエさんは、北京市が発表した新型ウイルス感染者リストに含まれていた。

 ユエさんの息子は2020年8月、東部・山東(Shandong)省で行方不明となった。ユエさんは昨年、息子がかつて調理師として働いていた北京を訪れた。

 息子が行方不明になったとされる地域を管轄する威海(Weihai)市の警察は21日、2020年8月に現地の貯水池で発見された「腐敗の激しい」遺体の身元が、DNA鑑定でユエさんの息子と特定されたとソーシャルメディアで明らかにした。ユエさん夫婦はDNA鑑定の結果を受け入れず、裁判を起こしたという。

 多くのネットユーザーは、ユエさんと、変異株「オミクロン株」の北京初の感染者である銀行員の生活を比較した。地元当局が公開した移動歴によると、銀行員は高級ショッピングモールで買い物し、スキーに行っていた。

 一方のユエさんは、家族と親戚を養いながら息子を捜す資金をためるため、建設資材の運搬や雑用などを掛け持ちしていた。今月1日から17日まで建設現場など20か所前後で、しばしば深夜まで働き、外食は一度きりという中国に数億人いる出稼ぎ労働者に典型的な生活を送っていた。

 ユエさんについて、「接触者追跡情報で見つかった最も勤勉な中国人」というハッシュタグを付けた投稿が多数見られたが、21日には検閲制度によって検索できなくなった。ユエさんに関する一部の報道も検閲され、ソーシャルメディア上で共有できなくなった。(c)AFP