■考古学研究の「理想郷」

 ラルサは考古学的に恵まれた土地で、古代メソポタミア地域の調査にとっていわば「理想郷」だとバレ氏は述べる。メソポタミア地域は古代から、アッカド帝国(Empire of Akkad)、バビロニア人、アレクサンダー大王(Alexander the Great)、キリスト教徒、ペルシャ人、そしてイスラム教徒が支配した時代を経て、今に至っている。

 しかし、紛争が続いたイラクの現代史、とりわけ米国が主導した2003年のイラク侵攻とその惨禍は、近年まで外国の研究者を遠ざけていた。

 イラクが「おおむね安定し、調査が再び可能になった」のは、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との支配権争いで政府が勝利を宣言した2017年以降だとバレ氏は説明した。ラルサがあるジーカール(Dhi Qar)県では、2021年末時点で外国の発掘グループ10組が作業している。

 ドイツ考古学研究所(German Institute of Archaeology)のイブラヒム・サルマン(Ibrahim Salman)氏は、イラク中部の聖地ナジャフ(Najaf)近郊にあるヒーラ(Al-Hira)市の遺跡に的を絞っている。

 ドイツは以前からここで発掘を行っていたが、独裁者サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領を失脚させた2003年の米軍侵攻を受けて中止していた。

 サルマン氏のチームは地磁気測定器を携え、かつてキリスト教徒の街だったヒーラを発掘している。最盛期はイスラム教の出現以前の紀元5~6世紀ごろ、ラクミッド族(Lakhmids)による王国の時代だ。地面に残る湿気の跡の下に、「古代の教会」が埋もれているという。

 他の遺跡に比べ、ヒーラは年代がはるかに新しい。それもまたこの国の多様な歴史の一部であり、「イラク、あるいはメソポタミアが文明のゆりかごである」ことの証左だとサルマン氏は語った。

 映像は7日撮影。(c)AFP/Guillaume Decamme