【1月20日 AFP】ドイツで20日、国内のローマ・カトリック教会の聖職者による児童性的虐待問題への上層部の対応に関する報告書が発表される。前教皇ベネディクト16世(Benedict XVI、94)も調査対象となっており、責任を追及される可能性がある。

 報告書は、ミュンヘン(Munich)とフライジング(Freising)を管轄する大司教区の依頼で、法律事務所ベストファール・シュピルカー・バストル(Westpfahl Spilker WastlWSW)がまとめた。1945年から2019年に同大司教区で起こった虐待にどのように対処したかを調べている。

 ミュンヘン大司教区は「責任者が法に従っていたか、虐待疑惑と加害者の可能性がある人物について適切な行動を取っていたか」を精査するとしている。

 ベネディクト16世は1977年から82年までミュンヘン大司教を務めた。

 ベネディクト16世の在任中、今では小児性愛者として広く知られるようになったペーター・フラマン(Peter Hullermann)司祭がミュンヘン大司教区に来た。前任地の西部エッセン(Essen)で、11歳の少年を虐待した疑いを掛けられていたにもかかわらず、ミュンヘンでも司祭に任命された。

 ベネディクト16世がバチカン市国に移った後の1986年、フラマン司祭は複数の子どもに性的虐待をしたとして有罪となり、執行猶予付きの禁錮刑が言い渡された。だが、有罪判決後も長年、子どもと関わる業務を続けていた。

 フラマン司祭のケースは、児童虐待問題に対する教会の対応が不適切だった例の代表とされている。

 ベネディクト16世は、フラマン司祭の過去は知らなかったと述べている。

 ドイツメディアの報道によると、ベネディクト16世は、調査に関するWSWからの質問に対し、82ページにわたる文書を提出した。

 改革を訴えるカトリック教団体「Wir sind Kirche」はベネディクト16世にミュンヘン大司教区時代の出来事について責任を取るよう求めている。

 同団体はベネディクト16世に対し、「行動したこと、しなかったこと、知っていたこと、知らなかったことによって、大勢の子どもの苦しみに個人的・職業的に加担したことを認めれば、多くの司祭や責任者の手本となる」と訴えた。

 ドイツ司教協議会(German Bishops' Conference)が2018年に依頼した調査では、1946年から2014年に、国内のローマ・カトリック教会の聖職者1670人が、未成年者3677人に性的虐待を行っていたことが分かった。

 しかし、実際の被害者はこれを上回るとみられている。

 昨年公表された報告書では、ケルン(Cologne)大司教区の司祭らによる一連の虐待が明らかになった。(c)AFP/Femke COLBORNE