【1月18日 AFP】男子テニスのノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)が新型コロナウイルスのワクチン接種状況をめぐってオーストラリアを国外退去になったことは、不吉な出来事の前兆かもしれない。

 34歳のジョコビッチは豪政府との裁判に敗訴し、男子シングルス歴代最多記録の四大大会(グランドスラム)通算21勝目への挑戦以外にも影響が及ぶ可能性がある。そこでAFPは、想定される三つの結末をまとめた。

■コート上の代償

 ジョコビッチはこれまで常にテニスの歴史的偉業への強い追求心を示しており、自身がその目標に到達できる立場にいるとしっかり意識している。

 ところが今年の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2022)では、オーストラリアから追放された史上初の世界ランク1位として歴史に名を刻み、今回の欠場によってコート上で途方もない代償を支払うことも想定される。

 ジョコビッチが今大会で目指していた前人未到のグランドスラム通算21勝目は、35歳のラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)が手中に収める可能性もある。

 仮にナダルが途中で敗退しても、ダニール・メドベージェフ(Daniil Medvedev、ロシア)かアレクサンダー・ズベレフ(Alexander Zverev、ドイツ)が大会初制覇を果たせば、ジョコビッチは歴代最長にして約2年間維持してきた世界1位の座を失う可能性がある。

■経済面での損失

 その輝かしいキャリアでジョコビッチが稼いできた金額は、約1億5000万ドル(約172億円)と推定されている。

 しかしながら、米誌フォーブス(Forbes)が伝えた昨年の3000万ドル(約30億4000万円)に上るスポンサー契約は、企業側が今回の問題に衝撃を受けて会社のイメージを損なうと懸念していることから、盤石なものでなくなる可能性がある。

 複数の米メディアによると、筆頭スポンサーである仏アパレルブランド「ラコステ(Lacoste)」との契約料は、約900万ドル(約10億3000万円)となっている。

 フランス出身の伝説的テニス選手である創業者ルネ・ラコステ(Rene Lacoste)氏の愛称だったワニのエンブレムで知られる同社は、「可能になり次第ノバク・ジョコビッチと連絡を取り、オーストラリアでの出来事について話す所存である」とのコメント文を発表し、同選手との話し合いを強く求める姿勢を示した。

■グランドスラム出場が不可に?

 ナダルが今年の全豪オープンを制した場合、ジョコビッチがグランドスラム男子シングルスの優勝回数で歴代単独1位に立つためには、メジャー大会でさらに2勝しなければならなくなる。ナダルが全豪制覇を果たしたのは1度だけで、同大会のファイナルでは計4回敗れている。

 同じくグランドスラム通算20勝をマークしているロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)が、膝の手術からまだ復帰できずに同21勝目は懐疑的とみられている一方で、ジョコビッチはまた一つ偉業達成に向けて視界良好かと思われていた。

 しかしながら、新型コロナウイルスの早期収束や慎重な各国政府による感染対策が解除される見通しも立っていないことから、今回のオーストラリア強制退去によってジョコビッチの今後のキャリアは複雑な状況に変化していく可能性がある。

 フランスでは16日、「新たな通知があるまで海外からの入国者を含め、ボランティアやエリートスポーツ選手ら全員を対象にした」新しいワクチンパスポートの導入が議会で可決された。同国スポーツ省が17日にその方針を発表し、ジョコビッチは全仏オープン(French Open 2022)出場のドアも閉ざされた。

 米ニューヨークでもワクチン接種が義務化されており、ジョコビッチは全米オープン(US Open Tennis Championships 2022)にも出られない可能性がある。これにより、同選手が出場を確信できるグランドスラムはウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2022)のみとなっている。(c)AFP/Pirate IRWIN