【1月18日 AFP】第2次世界大戦(World War II)最大の謎の一つが、ついに解明されたかもしれない──。「アンネの日記(The Diary of a Young Girl)」で知られるユダヤ人少女アンネ・フランク(Anne Frank)とその家族の隠れ家をナチス・ドイツ(Nazi)に密告した可能性が高い人物が、新たに行われた調査により特定された。

 米連邦捜査局(FBI)の元捜査官が率いるチームが現代の技術を駆使して6年間にわたり行った調査によると、この人物は、ユダヤ人公証人のアーノルト・ファンデンベルフ(Arnold van den Bergh)。自分の家族を守るためにフランク家の居場所を密告した可能性がある。

 決め手となったのは、アンネの父親オットー・フランク(Otto Frank)が受け取った後、長年にわたり所在が不明となっていた文書。そこには、ファンデンベルフが密告者として名指しされていた。調査結果は、18日に出版されるカナダ人作家ローズマリー・サリバン(Rosemary Sullivan)氏の新著「The Betrayal of Anne Frank(アンネ・フランクへの裏切り)」にまとめられている。

 1950年に咽頭がんで死去したファンデンベルフは、ナチスがユダヤ人をオランダから追放するために設立させた組織「ユダヤ人評議会(Jewish Council)」の創設メンバーだったが、その名前はこれまでほとんど注目されてこなかった。

 調査結果によると、ファンデンベルフは当初、家族の移送を免除されていたが、1944年8月にナチスがフランク家の隠れ家に踏み込んだのと同時期に免除が取り消されていた。このことから、ファンデンベルフが自身の子どもを守るためにフランク家を裏切ったのではないかとの疑念が生じた。

 ファンデンベルフは、ユダヤ人から略奪された美術品コレクションがドイツの美術商からナチス幹部のヘルマン・ゲーリング(Hermann Goering)に売却される際の公証人を務めていたことから、密告する機会もあったとみられている。

 アンネの父親オットーは1964年、警察に対し、自分の家族や他の人々を裏切った者としてファンデンベルフを名指しする文書を、戦後間もない時期に受け取っていたと話していた。調査チームは、オットーが作成したこの文書の写しを、警察の資料の中から発見した。

 オットーが文書を公表しなかったのは、裏切り者がユダヤ人だったことが明らかになると反ユダヤ感情があおられる恐れがあったからではないかと調査チームは考えている。(c)AFP/Danny KEMP