【1月17日 AFP】太陽光を反射する粒子を中層大気に大量散布して地表の温度を下げ、地球温暖化の影響を軽減する「太陽放射管理(SRM)」と呼ばれる気候工学(ジオエンジニアリング)の手法について、60人余りの政策研究者や科学者が17日、潜在的な危険を伴うため政府レベルで禁止するべきだと呼び掛ける公開書簡を発表した。

 書簡は、仮に数十億個の硫酸エアロゾルを散布して太陽光のほんの一部を狙い通り反射させられたとしても、その利益を相殺する結果が生じるだろうと述べている。

 学術誌「WIREs Climate Change」の論評を添えた書簡は、「ソーラー・ジオエンジニアリング(太陽気候工学)を地球規模で公正かつ包摂的・効果的に運用・管理することは不可能だ」と指摘。

「各国政府や国連(UN)その他の関係機関に対し、ソーラー・ジオエンジニアリングが気候変動対策の選択肢として標準化されるのを防ぐため、直ちに政治的行動を取るよう求める」と訴え、国家資金の投入や屋外での実験を禁止し、SRM技術に関する特許権を認めないことなどを盛り込んだ「国際的な不使用協定」を締結するよう呼び掛けている。

 大量の反射性粒子を大気中に散布すると地球の温度が低下することは、以前から知られている。自然界でも同様の現象がしばしば起きており、フィリピンのピナツボ山(Mount Pinatubo)が1991年に噴火した際には、地表の平均気温が1年以上にわたって下がった。

 一方で、太陽光を人為的に弱めるSRMによって南アジアや西アフリカの降雨量が減り、農作物に大損害を与えて何億人もの人々の主食に影響する恐れがあることが、複数の研究で示されている。また、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、「(SRMが)何らかの理由で中止された場合、地表温度が急上昇するのは確実だ」と指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD