【1月13日 AFP】ロシアの大軍が国境付近に集結し、戦争の危機が迫る中、ウクライナ東部の塹壕(ざんごう)で、兵士は野良猫や野良犬との思いがけない触れ合いに慰めを見いだしている。

「敵が攻撃を仕掛けてくると、ほえたり、うなったりする」。アウディーウカ(Avdiivka)近郊の凍えるような寒さのぬかるんだ塹壕で、ウクライナ兵のミキータさん(21)は所属部隊が拾った雌犬をなでながら、今や重要な戦力だとAFPに語った。「一緒にいると安心し、気持ちも落ち着く。犬は人間の最良の友だといわれるのも納得だ」

 ウクライナ東部では2014年、政府軍と親ロシア分離独立派との戦闘が激化し、200万人を超える住民が家を追われた。その際、多くのペットが置き去りにされた。

「動物たちのせいじゃない。悪いのは戦争だ」と、同じく兵士のウォロディミルさん(49)は猫たちに自分のスープを分けながら言った。「置いて行かれて、自力で生きなければならなかった。私たちが餌をやらなければ」

 ウォロディミルさんが守備につく塹壕では、15匹ほどの猫と数匹の犬が兵士と寝食を共にしていた。

 爆撃で破壊された民家の地下室で寝泊まりしている兵士のドミトロさん(29)は、「チェルヌハ(Chernukha)」と名付けた黒猫を手放しで称賛した。「冬になると塹壕の中を野ネズミが走り回っていたが、全部つかまえてくれた」

 ドミトロさんは14年に親ロシア派と戦った時にも、当時の最前線スラビャンスク(Slavyansk)付近で生後およそ1か月の子犬と友達になったという。子犬はあっという間に部隊の「小さなお守り」となった。砲撃が始まる数分前に、子犬がぱっと物陰に隠れたのを覚えていると笑顔で語った。

「私たちも大急ぎで子犬のまねをした。防弾チョッキとヘルメットをつかんで、走ったんだ」

 ロシア軍が侵攻してくるかもしれないという緊迫した状況下で、動物のおかげでリラックスでき、代わり映えのしない日々の任務でもつかの間の休息を得られると兵士たちは話す。

「拠点に戻ってきてベッドに横になると、チェルヌハがやってくる。おなかの上に横たわり、なでてほしそうにこちらを見る」とドミトロさん。「まさに鎮静剤だ」 (c)AFP/Anatoliy STEPANOV