【1月15日 AFP】スペイン第2の都市バルセロナ(Barcelona)の中心部で、車のいなくなった道路を子どもたちの一団が自転車で駆け抜ける。交通のグリーン化と健康増進を兼ねた市の安全登校プロジェクトで、世界各地にも関心が広まっている。

 子どもたちは毎週1回、金曜日の午前8時30分頃から車両通行止めにされるアシャンプラ(Eixample)地区で、自転車を繰り出し集団登校する。

 運行中のルートは2本で、バス路線のように決まっている。およそ140人の子どもたちは自宅近くの「停留所」から隊列に加わり、それぞれの学校の近くで「降りる」。そこから、このプロジェクトは「ビシブス(自転車バス)」と呼ばれている。一緒に走る保護者も多く、小さい子の場合、キッズシートに座らせて学校まで連れて行く姿も見られる。

 取り組みは昨年9月に始まったばかりだが人気が高く、他の地区でもまねようとする動きがある。さらに国外でも関心を呼んでいる。

 広い街路と粋な店舗で知られるアシャンプラの学校に子どもが通うジェニス・ドミンゲス(Genis Dominguez)さん(40)は「数か月すれば、他の地区でもルートができるでしょう」と語った。市内ではすでに35校の保護者たちが、この実験に続こうと会合を持ったと言う。

 バルセロナは元から自転車専用レーンのネットワークが発達していることで有名だが、自転車通学する子どもたちにとって必ずしも安全とはいえないとドミンゲスさん。「レーンは車道にとても近い。スピード超過の車が走り、バイクもかなり接近してきます」

 金曜日の集団登校では、子どもたちを守るためにバルセロナ市警察が出動。自転車やバイクに乗った警官が、子どもたちの前後や横を伴走する。

 市当局は取り組みの目標について「より持続可能で活発なモビリティ(移動手段)への移行」を促すことだと述べる。

 同様のプロジェクトはアイルランドの首都ダブリンなど他の都市でも実施されている。それでも大勢の子どもが自転車で一斉にバルセロナの通りを走る「ビシブス」の動画は、特に人々の関心を引き、ネットで拡散。米サンフランシスコの保護者たちから、南米アルゼンチン・ブエノスアイレスの市役所まで、世界中から問い合わせが寄せられているという。

 今のところ、子どもたちの間でプロジェクトは大人気のようだ。「保護者は、子どもを起こすのが一番楽な日は金曜日だと言っています」とドミンゲスさんは語った。

 映像は2021年12月に取材したもの。(c)AFP/Aitor Iturria