【1月12日 AFP】アフガニスタンの首都カブールの空港で昨年8月、米軍撤収に伴い何万人もの国外退避希望者が殺到して起きた混乱の中で行方不明になっていた乳児が、5か月ぶりに親族と再会を果たした。祖父がこのほど、AFPに明らかにした。

 イスラム主義組織タリバン(Taliban)がカブールを制圧した後、多数の市民が国外へ避難しようと空港に集まった。そのうちの一人、父親のミルザ・アリ・アフマディ(Mirza Ali Ahmadi)さんは、当時生後2か月だったソハイル(Sohail Ahmadi)ちゃんを外国人兵士に預けた。

 父子が離れ離れになった直後に何が起きたかは分かっていない。だがタクシー運転手のハミド・サフィ(Hamid Safi)さん(29)によると、ソハイルちゃんは父親と別れたその日に空港の床に放置され、独りで泣いていたという。

 国外へ退避する家族を手助けするために空港にいたというサフィさんは、乳児の「家族を捜し回った」が見つからず、妻に電話したところ、家に連れて帰るよう促されたという。

 その後も両親の捜索を続けたものの、発見に至らなかったサフィさん夫婦は、自分たちで乳児の世話を始めた。

 一方、父親のアフマディさんは、外国人兵士に預けて行方が分からなくなってしまったソハイルちゃんを空港で3日間捜し続けたが、やむなく妻と残る4児を連れて渡米することを決断した。

 しかしソーシャルメディアと警察の協力により、カブール市内に住むソハイルちゃんの親族が数日前に見つかり、ソハイルちゃんは祖父のミルザ・モハマド・カセミ(Mirza Mohammad Qasemi)さんに引き渡された。サフィさん夫婦と4人の娘にとっては、胸が締め付けられるようなつらい別れとなった。

 ソハイルちゃんは「夜中に何度も起きることがあった」と振り返った妻のファリマ(Farimah Safi)さんは、「今では自分が起きてもあの子はいない。それで私の方が泣いてしまう」と心境を吐露した。

 ファリマさんはAFPに対し「私も一人の母親として、あの子がいつまでも私たちといることはできないし、実の親の元にいるべきだと理解している」と述べた。

 9日には祖父のカセミさんがサフィさん一家を自宅に招き、ソハイルちゃんと面会して共にひとときを過ごした。

 自身も孫の行方を捜していたというカセミさんは、ソハイルちゃんがこれから米国にいる両親と再会できることを喜んでいると話した。

 AFPの電話取材に応じた父親のアフマディさんは「これまでの5か月間はひどい状況だった…しかし息子が見つかった時、神があの子をわれわれの元に返してくれたのだと思い、うれしかった」と語った。

 映像は9日撮影。(c)AFP/Jay Deshmukh and Luana Sarmini-Buonaccorsi