■「マフィアと変わらない」

 皮さんは40日間、拘留された。龍さんも抗議行動を起こした後、「違法な集会に参加し、治安を乱した」という罪状で9か月間収監された。

「これじゃマフィアと変わりませんよ」と皮さんは言う。「不満を漏らすと、弾圧されて収監され、刑に服することになります」

 黄郊村を管轄する保定(Baoding)市の農村部の平均可処分所得は、年間1万6800元(約30万円)だが、龍さんや皮さんの収入は到底そこまで届かなくなった。

 村近くにあるSPIC太陽光設備の電力は五輪会場に直接供給されるのかというAFPの質問に対し、同社は回答しなかった。

 一方、五輪会場の一つとなる張家口(Zhangjiakou)市当局は、2015年に五輪の招致に成功して以来、同市は「ゼロからスタートして、中国最大の非水力再生可能エネルギー基地に変身した」とうたっている。

 河北省の他の地区でも、公的助成金に支えられた再生可能エネルギー事業が加速され、五輪開催前に大気汚染を削減する取り組みが急ピッチで進められている。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、風力や太陽光発電事業で懸念される人権問題で多いのは、「強制退去、不法な土地収用、それに伴う生計手段の喪失」だとしている。

 中国は2030年までに、電力源に占める非化石燃料の割合を25%まで増やす考えを示している。そのためには、風力と太陽光の容量を現在の倍以上にしなければならない。しかしその結果、ますます土地が収用されることになると環境活動家は指摘している。

 政府は冬季五輪絡みで意欲的な目標を掲げているが、環境活動家がその方針に疑問を投げ掛けると大きな圧力をかけられる。数人の活動家はAFPに対し、報復される恐れがあるので、五輪に関する環境目標については、おいそれとは口にできないと明かした。