【1月12日 AFP】繰り返されるロックダウン(都市封鎖)、マスク着用の義務化、娯楽・スポーツ施設利用時のワクチンパス(接種証明書)提示──新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の結果、世界の中でも民主主義の歴史が古いとされる国々で市民の自由が大幅に制限されてきた。

 ウイルスとの闘いの名の下、中でも、いち早く基本的な自由を制限する方針を打ち出したのが欧州各国だ。

 フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は年明け早々、物議を醸した。インタビューで、ワクチン接種を拒否している人々に対し、「社会生活をできるだけ制限」して「とことんうんざりさせてやりたい」と発言したからだ。

 米国も強硬な対策を講じてきた。世界の大半の国からの入国を20か月にわたり禁止。連邦政府の全職員や大企業の社員のワクチン接種を義務化した。

 独ベルリンを拠点とする人権監視団体、「欧州自由人権協会(Civil Liberties Union for Europe)」は昨年の報告書で、ワクチン未接種者を標的とするような措置は「既存の不平等を拡大させる恐れがある」と警告。「さまざまな自由と権利を享受する市民と、排除される市民から成る2層社会が生まれかねない」と指摘した。

■迫害か、保護か?

 各国政府は、パンデミックの初期段階では徹底的なロックダウンや外出制限によって、感染拡大の抑え込みを図った。だが昨年は多くの国が戦略の見直しに取り掛かり、ワクチン接種完了を示すデジタルパスを発行し始めた。

 しかし、今また変異株「オミクロン株」の拡大を受けて、一律的な措置に戻す政府もある。

 オーストリア政府は昨年12月、部分的ロックダウンを解除した後も、ワクチン未接種者の自宅待機を継続した。2月には欧州で初めて、全国民にワクチン接種を基本義務化する。

 英国のボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相もワクチン接種の義務化「検討」の必要性について触れたことがある。

 一方、フランス政府はドイツに続き、ワクチン未接種者をレストラン、映画館、レジャー施設から締め出す方向だ。

 コロナ危機の当初は、行動制限に対する世論の支持は高かった。だが、パンデミック疲れによって、新たな制限に対する抵抗感が強まってきている。

 ワクチン未接種者は、差別を受けていると訴える。中には、第2次世界大戦(World War II)下の欧州でユダヤ人が受けた迫害に例える人もいる。