【1月7日 CNS】鮮やかな赤いたてがみに、すらりと伸びた白い脚を持つ神獣「吉量」が水辺に横たわる。古代中国の地理書「山海経」は、この獣に乗ると1000年の寿命が増えると記している。北京市の軍都山(Jundu)にある黄花城(Huanghua)ダムの近くには、「山海経」に記録された大小60体以上の神獣の彫刻が並んでいる。いずれも中国の現代アーティスト邱啓敬(Qiu Qijing)さんが手がけた作品だ。

「山海経」は古代中国の戦国時代から秦、漢の時代にかけてまとめられた百科事典風の地理書。各地の産物や動植物、歴史のほか神話や神獣など空想的な内容も含まれ、「易経」「黄帝内経」と合わせて古代三大奇書と呼ばれている。2000年もの間、数え切れないほどの文化人が「山海経」の神獣を表現してきたが、これほどの規模で彫刻による再現を実現したのは初めてだ。

「神獣の立体像と言うと、陵墓を守る獣や官僚の屋敷正門にある獅子ぐらいしかない。書物で見た平面の神獣を、自分が立体像にしようと考えたんです」と振り返る邱さん。2012年ごろから制作を始め、10年にわたり続けている。

 4つの翼と6本の脚を持ち、目や鼻などの穴がない「渾沌(こんとん)」。虎のような外見だが、穏やかな性格で獣を捕食しない「騶吾(すうご)」。人の顔と羊の体を持ち、すべてを食べ尽くす饕餮(とうてつ)…。先人の豊かな創造力が生み出した伝説の生き物を、邱さんは次々と形にしていった。

 神獣が集まった「楽園」の様子をショートビデオで公開すると子どもたちを中心に人気となり、わずか数か月で70万人以上のファンを集めた。邱さんは「『山海経』には、子どもたちの想像力を駆り立てる魅力がいっぱいある。最近はディズニーのキャラクターやアメコミヒーローが人気ですが、あらためて中国の伝統文化に目を向けてほしい」と話す。

 邱さんは今後、「山海経」に登場する469の神獣すべてを制作したいと考えている。「私の人生の成長日記になります」。将来は神獣の像が国内外で展示されることを望んでいる。(c)CNS/JCM/AFPBB News