【1月2日 Xinhua News】中国の祁連(きれん)山麓に位置する甘粛省(Gansu)張掖(ちょうえき)市粛南ユグル族自治県では、季節ごとに家畜を長距離移動させる独特の生活様式に変化が起きている。一部の牧畜民は冬に牧草地ではなく農地に向かうようになった。

 同自治県大河郷西岔河村の趙志鋒(Zhao Zhifeng)さんは羊200頭の健康診断と予防接種、管理台帳の作成を終えると、「健康証明」を持つ羊の群れを追い立てて移動を始めた。2日かけて同自治県の明花郷に行き、来年3月まで郷内の農地で放牧を行うという。趙さんは「農地は暖かく、子羊の生存率も高い」と話す。

 この方式は「借牧」と呼ばれる。古くから畜産が盛んな同自治県ではここ数年、祁連山の生態環境をより適切に保護し、草原での放牧を減らすため、牛や羊を農地で放牧する同方式を考案。多くの牧畜民が毎年10月から翌3月まで牛や羊を近隣の農地へ連れて行き、トウモロコシなどの収穫後に残った茎で肥育しながら冬を越す。農地で残茎焼却による土壌汚染を避け、家畜のふん尿を堆肥化するだけでなく、牧草地の養生もできる。

 推計によると、自治県内で借牧を実施した家畜は今年、羊の数に換算して18万6千頭となった。借牧により草原の負荷が軽減し、生態系は効果的に回復した。牧草の高さは2015年の平均15センチから昨年の19センチまで伸び、草原の植生被覆率も同67%から78%に向上した。また、借牧期間中の純収入が羊1頭当たり88元(1元=約18円)増加し、総増収額は1082万元となった。

 同自治県牧畜獣医サービスセンターの安玉鋒(An Yufeng)主任は、新たな方式が畜産業の効率化や牧畜民の収入増、草原の健全な更新につながったと指摘。畜産業の質の高い発展と草原の生態系保護の双方を実現したと語った。(c)Xinhua News/AFPBB News