■鉄道は「国家安全保障」に関わる

 多くの住民は、マヤ鉄道が生活を向上させるという大統領の主張を支持していない。

 環境保護活動家、先住民、政府を批判する勢力、さらにはかつて反政府ゲリラ活動を展開したサパティスタ国民解放軍(EZLN)もこのプロジェクトに反対。環境権と居住権を侵害するとして25件の訴訟が起こされている。

 環境保護NGO「メキシコ環境法センター(CEMDA)」は、自然保護区の樹木伐採や生態系の分断に焦点を当てた訴訟を起こし、「生物学的に劣化し、生き物が住めない」場所になる恐れがあると訴えた。川や湖、絶滅危惧種、マングローブに影響が及ぶ可能性も指摘した。

 一連の訴訟を受け、ロペスオブラドール大統領は11月、反対派に阻止できないようマヤ鉄道プロジェクトは「国家安全保障」に関わると宣言した。

■大成功か大失敗か

 プロジェクトを管理するメキシコ国家観光振興基金(FONATUR)は、現地住民の大半はプロジェクトを支持していると主張する。

 環境への影響を軽減するために、FONATURはカンペチェにある国内最大級の熱帯雨林カラクムル(Calakmul)の保護区面積を現在の73万ヘクタールから120万ヘクタールに拡大すると発表した。

 建設工事中には何千点の考古学的遺物も発見された。当局は押し寄せる観光客からメキシコの遺産を守る計画も準備しているとした。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)のエティエンヌ・フォンバートラブ(Etienne von Bertrab)教授(政治生態学)は、マヤ鉄道は「ユカタン半島を再編成し、その影響は長期間にわたって続くだろう(中略)大きな成功を収めるかもしれないし、悲惨な結果に終わるかもしれない」と指摘した。(c)AFP/Alexander MARTINEZ