【1月10日 AFP】バングラデシュ出身の難民、ファズレ・ラビ(Fazle Rabbi)さん(18)は大きな作業台をクラスメート十数人と共に囲み、ネットワークケーブルの配線方法を学んでいる。ここギリシャで就職するチャンスを広げるためだ。

「この学校で良い成績を収めれば、IT技術者として採用してもらえるのではないかと思います」と、ペンチを手にしたラビさんは語った。

 ラビさんたちが受講中の職業訓練・起業家養成コースを提供しているのは、非営利団体の「オデュッセイア(Odyssea)」。難民や社会的弱者を対象にした就業支援団体の一つだ。

 アテネ首都圏の港湾都市ピレウス(Piraeus)近郊の工業地帯を中心に活動しているオデュッセイアは、2016年の設立以来、約2500人の就職を支援してきた。現在、受講希望者は3000人に上る。

 設立されたのは、シリアやアフガニスタン、イラクから自国の紛争を逃れて欧州に渡った難民が100万人を突破して間もない頃だった。経済危機後のギリシャで仕事を見つけるという、高いハードルに直面した人々をサポートしている。

 ギリシャの経済危機は10年近くに及び、政府統計では失業率は今なお13%と高く、25歳未満では28%に達する。

 ギリシャでは、国際移住機関(IOM)が主導する難民向けの社会統合コースで6000人以上が研修を受けてきたが、そうした支援の対象になっていない難民は数万人に及ぶ。

 カメルーン出身で難民認定申請をしているヤニック・カルロス・ワフォ(Yannick Carlos Wafo)さん(27)は、「ギリシャ社会に溶け込むのは大変です」と語る。ワフォさんは電気技師になるためのコースで学び、配管工の仕事を得た。

 オデュッセイアでは、プロ仕様の厨房(ちゅうぼう)で料理人やバーテンダーを育成するコースや、3D印刷技術や木工、電気工事、配管などを学べるコースを提供している。

 オデュッセイアの設立者で最高経営責任者(CEO)のジェイ・メキシス(Jai Mexis)氏は、「受講生の70%以上が仕事を続けています」と語った。(c)AFP/John HADOULIS