【12月24日 Xinhua News】中国安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)の中国科学院合肥物質科学研究院でこのほど、「人工太陽」と呼ばれる全超伝導トカマク型核融合実験装置(EAST)が運転を再開し、新たな実験が始まった。

 同研究院副院長でプラズマ物理研究所所長の宋雲濤(Song Yuntao)氏は今回の実験について、前回の実験結果に対する総括と補助加熱などのシステムに対する高度化改造を基盤として行っていくと説明。人工太陽をより「熱く」、より「長持ち」させるようにすることが目的だと語った。

 EASTは高さ約11メートル、直径約8メートル、重さ400トン余りで、巨大な「缶」のように見える。「超高温」「超低温」「超高真空」「超強磁場」「超大電流」などの先端技術が詰め込まれており、太陽の核融合反応を再現するために使われる。

 人類は20世紀半ばに核融合エネルギーの研究を始めた。中国科学院は1970年代にトカマクを研究するプロジェクトチームを立ち上げ、合肥など各地に拠点を配置していった。完成から10年余りにわたり、国内外の1万人を超える科学研究者が、この大きな科学装置を使って人工太陽の夢をかなえるために力を合わせ、安定的な101・2秒間の定常状態長パルスプラズマの高閉じ込め、電子温度1億度での20秒間のプラズマ入射など世界的にも重要な技術的飛躍を遂げた。

 EASTの制御室では、一定の時間ごとに警報ランプが点滅し、中央の大型モニターで時間の測定が始まる。測定が終わると、画面左上の数字が増える。取材で訪れた日の実験放電回数は「105689」。EASTが1億2千万度で101秒間のプラズマ入射を実現し、世界新記録を樹立した5月28日は早朝の時点で「98958」を示していた。

 探究に終わりはなく、人工太陽の可能性に限りはない。核融合研究の派生技術は私たちの生活を静かに変えようとしている。合肥の地下鉄ではプラズマ空気清浄機が使われ、「陽子線治療」はがん治療の重要な手段になりつつある。このほか、テラヘルツ波や磁気浮上式鉄道、核磁気共鳴(NMR)などの応用も進んでいる。宋氏らが中心となって設立した合肥総合国家科学センターエネルギー研究院では、複数のエネルギー多消費企業と協力して、二酸化炭素(CO2)排出削減などの領域で研究成果の実用化を進めているという。

 現在は「次世代の人工太陽」と呼ばれる中国核融合工学実験炉(CFETR)の工学設計が終わり、核融合技術の総合研究施設(CRAFT)の建設が進められている。(c)Xinhua News/AFPBB News