【12月22日 AFP】トルコでは、トルコ・リラの暴落とともに瞬く間に薬局から消えていった輸入薬を求め、大勢の人が町を探し回っている。

 ファティヒ・ユクセル(Fatih Yuksel)さん(35)もその一人だ。炎症性疾患「ベーチェット病」があり、ここ9年間、症状を緩和するための薬を服用している。「必要な薬が手に入らないこともあり、持病が悪化している」

 糖尿病やがん、心臓病、インフルエンザなどさまざまな疾病用の輸入薬が全国の薬局2万7000店の店頭からほぼ消えてしまった。

 通貨安の混乱にさらに拍車を掛けたのは、レジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領による、市場理論の常識に反する金融政策だ。同氏の要求により中央銀行は今秋、インフレ対策として利下げを断行。トルコ・リラは11月だけで3分の1減価した。

 どこで薬を入手できるのか必死になって聞き出そうとする人から写真付きのメッセージが、薬剤師にアプリで送られてくる。

 トルコ薬剤師会(TPA)はAFPに対し、11月の時点で影響を受けた輸入薬は645点だったが、事態が悪化するにつれて1000点余りの入手が難しくなったと述べた。

 アンカラの薬剤師会の代表タネル・エルカンリ(Taner Ercanli)氏は「状況はトルコ・リラのせいで悪化している」と指摘。「火事なのにガソリンをまいているようなものだ」と語った。

 トルコ保健省は毎年2月、政府が合意した為替レートに基づき、医薬品の基準価格を設定している。この制度も、医薬品の入手を困難にしている。

 今年の基準価格は1ユーロ(約130円)=4.57トルコ・リラだった。しかし、12月には20トルコ・リラ近くにまで落ち込んだ。

 さらに大きな問題は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による世界のサプライチェーン(供給網)の混乱だ。ほとんどの原料価格が高騰し、国産医薬品も値上がりした。(c)AFP