【1月6日 AFP】昨年1月6日、当時の米大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の支持者が米連邦議会議事堂を襲撃した。事件を調査している下院特別委員会が的を絞っているのは、トランプ氏と側近、そして襲撃前の行動についてだ。

【記者コラム】民主主義がつまずくとき 米首都

 連邦控訴裁判所(高裁)は昨年12月、議会襲撃事件に関するホワイトハウス(White House)の記録を委員会に提出しないよう求めたトランプ氏の申し立てを退けた。さらに下院は、同氏の首席補佐官を務めたマーク・メドウズ(Mark Meadows)氏について、委員会での証言を拒否したため、議会侮辱罪で訴追するよう求める決議を可決した。

 委員会はすでに300人近くとの面談を済ませている。

 委員会が明らかにしようとしているのは、2020年11月の米大統領選でジョー・バイデン(Joe Biden)氏に敗れた後のトランプ氏の行動の全容と、同氏がクーデターを企て、米国の民主主義に前代未聞の脅威をもたらそうとした可能性だ。

 2021年1月6日の議会襲撃事件までの、重大な局面を迎えた数週間に何が起きていたのかを振り返る。

■ホワイトハウス近くに「作戦室」

 トランプ氏が民主党候補バイデン氏の当選をなかなか認めようとしなかったのは、腹立ち紛れによる単なる悪あがきではない。トランプ氏は本気だった。権力を維持するために数週間、必死の努力を続けた。

 複数の州の集計に異議を唱えたが、結果が覆ることはなかった。その後、トランプ氏が力を入れたのは、1月6日に開かれる連邦議会の上下両院合同会議を阻止することだった。この会議でバイデン氏の勝利が承認されることになっていた。

 2020年12月中旬、弁護士ジョン・イーストマン(John Eastman)氏は、トランプ氏のために綿密な計画を立てた。それは、合同会議の進行役を務めるマイク・ペンス(Mike Pence)副大統領(当時)に、法的な抜け穴を利用してバイデン氏の大統領就任を阻止させるというものだった。

 さまざまな報道によると、メドウズ氏をはじめ数人の側近は、その計画とともに、選挙で不正があったとする陰謀論を広めた。トランプ氏陣営は一方で、ペンス氏がバイデン氏の勝利認定を拒否するための法的根拠を準備する作業を続けた。

 プレッシャーをかけられたペンス氏は12月下旬、ダン・クエール(Dan Quayle)元副大統領に相談。クエール氏は、バイデン氏の勝利を認定しなければならないと答えた。

 しかし、トランプ氏の退任までの数か月間を追った新たな報道や書籍によると、ペンス氏はすぐにはボスであるトランプ氏にノーと言おうとしなかった。

 ジャーナリストのボブ・ウッドワード(Bob Woodward)、ロバート・コスタ(Robert Costa)両氏の共著「Peril(危機)」によれば、「私が置かれた立場を分かっていない」とペンス氏はクエール氏に語ったとされる。

「私には(結果を覆す)権限があると主張する人々もいる」

 1月5日と6日、トランプ氏とメドウズ氏、他のホワイトハウス側近は、近くのホテルに設置した「作戦室」とたびたび連絡を取っていた。この部屋に詰めていたのは、弁護士のイーストマン氏、トランプ氏の首席戦略官を務めたスティーブ・バノン(Steve Bannon)氏、さらに一般のトランプ氏支持者と接触していた人々だった。