【12月26日 AFP】小さな広間に数百個のアンティーク時計が、チクタクと音を立てながら所狭しと並ぶ。警官として働く傍ら時計を収集してきたグール・カカール(Gul Kakar)さん(44)は、残りの人生を時計の世話にささげようと心に決めている。

「時計の言葉が分かるのです」とカカールさんは語る。「時計たちが具合が悪いと訴えると、私にはそれが分かるのです」

 カカールさんのコレクションは、パキスタン南西部バルチスタン(Balochistan)州の州都クエッタ(Quetta)の警察本部の建物内に置かれている。中には1800年代に製作された時計もある。

 バルチスタン州は民族間や宗派間の衝突、分離主義者による暴動などが絶えない地域。これらの時計は強固な門や防爆壁の奥で、ひっそりと時を刻んできた。

 厳重な警備のためか人の出入りは少ない。コレクションを見に来る愛好家も来客もめったにいないとカカールさんは言う。

 収集を始めたのは数十年前、自宅の時計二つが故障し、修理に出したときだ。「それからもっと時計がほしいと思うようになりました」。すぐに本腰を入れ出した。

 インターネットでアンティークの時計を探したり、外国にいる友人に中古品を買って送ってもらったりしているうちに18年以上がたった。

 だが、家族の中にはこの情熱を分かち合える相手が誰もいない。カカールさんは自分が死んだら、コレクションは売られてしまうかもしれないと話す。

 自分の名を冠した博物館がつくられることになれば、それが政府機関でも民間でも、カカールさんはすべてを寄付するつもりでいる。ただ、今のところそのような申し出はまだないようだ。(c)AFP/Maaz KHAN