【12月19日 AFP】中国競泳男子のスター選手で、6月にドーピング違反による資格停止処分を科された孫楊(Sun Yang、ソン・ヨウ)に、処分を無視して国の施設で練習を行っていた疑いが浮上した。世界反ドーピング機関(WADA)が18日、疑惑を調査すると発表した。

 英紙タイムズ(Times)によると、孫は4年超の資格停止処分を科されているにもかかわらず、2024年のパリ五輪に向けて政府が出資した「パフォーマンス・スポーツ施設」で練習を行っており、その様子を写した写真もある。違反が事実だった場合は、処分のやり直しになり、パリ五輪に出場できなくなる可能性もあると伝えられている。

 この件について、WADAは広報を通じて「非常に深刻に」受け止めていると話し、調査を開始したことを発表した。

 孫は2018年9月、抜き打ち検査で自宅を訪れた検査官に対して血液と尿のサンプルを提出することを拒否し、紆余(うよ)曲折を経てスポーツ仲裁裁判所(CAS)から8年の資格停止処分を科された。その後、裁定に偏りがあったとする異議申し立てがスイス連邦最高裁判所に認められ、処分は4年3か月に短縮された。

 そのため今夏の東京五輪には出られず、母国開催となる2022年の第19回アジア競技大会(19th Asian GamesAsiad)も出場は不可能となっているが、処分は2020年2月にさかのぼって科されたため、32歳での挑戦ではあるがパリ五輪では復帰できる予定となっている。

 五輪で三つの金メダルを獲得し、男子1500メートル自由形の世界記録保持者でもある孫は、2014年にも別の薬物違反で3か月の処分を科されるなど、キャリアを通じて騒動を巻き起こしてきたが、今回の件では一貫して潔白を主張している。(c)AFP