【1月24日 AFP】肥大化した肝臓、裂傷を負った幼児、変形した少女の頭骨──。オーストリア・ウィーンの自然史博物館(Natural History Museum)の学芸員は、医学的人体標本の展示を再開するに当たり、倫理と品位の面で現代の一線を越えないよう、いかに展示するかという問題に直面した。

 人体標本は医学生の研修用に1796年に収集が始まり、現在約5万点が収蔵されている。昨年9月、収蔵品の一部の展示が再開された。中には200年以上前のものもある。

 ただ、今日の社会においては、死者の尊厳、権力と搾取、本人がはるか昔に亡くなっているとはいえ公開することへの同意の有無といった倫理的な問題よりも公共の利益が上回るのかという難しい問題が突き付けられる。

 学芸員のエドゥアルト・ウィンター(Eduard Winter)氏は「できる限り説明を施すことによって、見せ物にならないよう注意した」と話す。展示室での撮影は禁止されている。

 博物館の利用者は、ウイルス性感染症の症状や、やけどを負った血管の状態などを学ぶことができる。人間の臓器や頭骨など、他国では専門家しか目にできないようなものもある。

 一般公開に賛同する人は、病気や健康に関する科学的研究について学べる点が公共の利益になると考えている。

 展示責任者カトリン・フォーラント(Katrin Vohland)氏は、何らかの病気を患っており来館する人もいると話す。