【12月14日 AFP】違法なごみ捨て場は、クリスマスにふさわしい舞台ではないかもしれない。だが、ある少年がごみの山からクリスマスツリーを拾い上げた瞬間を捉えた写真は、インターネット上で瞬く間に広まった。

 ガブリエウ・シウバ(Gabriel Silva)君(12)は、ブラジル北東部マラニョン(Maranhao)州の町ピニェイロ(Pinheiro)で泥壁の小屋に、母親と兄2人と住んでいる。家の隣はごみ捨て場だ。

 11月8日、シウバ君は下校するといつも通り母親と一緒に、ごみ捨て場で物色を始めた。掘り出した青いプラスチック袋の中には、小さなクリスマスツリーが入っていた。

「うちにクリスマスツリーがあったことなんてなかった」とシウバ君。

 AFPでも活躍するフリーランスのフォトグラファー、ジョアン・パウロ・ギマラエス(Joao Paulo Guimaraes)氏がその瞬間を捉えた。

 上半身裸で写っているシウバ君の表情は謎めいていて、この発見物をどうしたものかと思いあぐねているかのようだ。彼の子ども心はくすぐられたが、家計の足しにはならない。だがその写真は、ソーシャルネットワーク上で拡散した。

 今やシウバ君一家の住む小屋の中には、光輝く大きなクリスマスツリーが飾られている。ごみ捨て場から拾ってきたものではなく、写真を見て心を動かされた人から贈られたものだ。

 さらにたくさんの寄付が家族に寄せられた。「服やマットレス、かごに入った食料ももらいました。ありがたいです。今年のクリスマスは何とかやれそうです」と母親のマリア・フランシスカ(Maria Francisca Silva)さん(45)は言った。

 写真を撮ったギマラエス氏は、隣接するパラ(Para)州に住んでいる。スーパーから出たごみを運ぶトラックの後を追うピニェイロの住民を映した動画を見たことをきっかけに、ごみ捨て場で写真を撮ろうと思いついた。

 動画を撮影したエウリコ・アルーダ(Eurico Arruda)氏は「このごみ捨て場は、世界の終末から現れたみたいです。あちこちで炎や煙が上がり、ハゲワシや犬がさまよっている。極貧の最下層の暮らしです」と言う。

 アルーダ氏はこのクリスマスツリーの写真によって、シウバ君が陥っているような窮状に対する人々の関心が高まることを願うと語った。(c)AFP/Joao Paulo GUIMARAES, with Louis GENOT in Rio de Janeiro