【12月18日 AFP】自転車競技で米国代表チームに入るほどの選手だったときは、よく自分で自転車を修理していた。子ども時代は家業の畜産農場を手伝っていた──米航空宇宙局(NASA)宇宙飛行士候補生のクリスティーナ・バーチ(Christina Birch)さん(35)は、手先を使う作業の経験が豊富だ。

「月への帰還」を掲げる米国が、月面での長期的な居住環境の確立を目指す中で、バーチさんは大きな夢を抱いている。「月面に何かを築く手伝いをして、この探査計画の役に立てるなら、ものすごくクールでしょう」とAFPに語った。

 バーチさんは、NASAが今月上旬に発表した10人の新人候補生の一人。「アルテミス(Artemis)世代」と称される宇宙飛行士の最新メンバーだ。2020年代後半の月面有人探査と、その後は火星探査を目指すとする米国の「アルテミス探査計画」にちなんでそう呼ばれている。

 応募者1万2000人という狭き門の選考では、人類史上最も過酷な探査ミッションの達成を見据え、さまざまな経歴の候補生が選抜された。

 バーチさんは米マサチューセッツ工科大学(MIT)で生物工学の博士号を取得した。宇宙旅行の夢を抱いたきっかけは、その実験室での研究活動だ。

「生物工学の研究者として細胞やタンパク質を使った実験をしていて、同じような実験が宇宙ステーションでも行われていることを知ってからだと思います。『あれっ、私にはそのスキルがあるじゃない』と思ったんです」

■2年間の集中訓練へ

 バーチさんにはもう一つ、大きな実績がある。自転車トラック競技の元選手で米国代表チームに所属し、東京五輪の最終選考に残り、ワールドカップではチームパシュートとマディソンでメダルを獲得している。「トレーニングプランとか計画を立てて、大きな目標に向かって努力するのが大好きです」

 候補生に選ばれている多くのベテランパイロットとは違い、飛行経験はまったくないが、ジェット機での訓練を楽しみにしているという。「私のこれまでの最速記録は、競技場のトラックで、自分の脚力で出したものですから」とバーチさんは語った。

 NASAは、2025年に有人月面着陸の実現を目指している。新人候補生は来年1月、米テキサス州ヒューストン(Houston)のジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)に集合し、2年間の集中訓練を開始する予定だ。

 訓練では、国際宇宙ステーション(ISS)の運用と整備の方法、船外活動の実施法、ロボット操作技能やT-38ジェット練習機の安全な操縦法などを学ぶ他、ロシア人宇宙飛行士とコミュニケーションを取るためのロシア語を習得する。(c)AFP/Lucie AUBOURG