【12月10日 AFP】中央アジア・カザフスタン北部の荒涼とした大草原の中にたたずむ、秘密めいた小都市バイコヌール(Baikonur)。廃虚と化した遊園地のそばを歩きながら、かつて都市建設を指揮したマリク・ムタリエフ(Malik Mutaliyev)さん(67)は「この町はさまざまなことを乗り越えてきた。ペレストロイカ(Perestroika)、ソビエト連邦の崩壊、電力不足──全て経験した」と語った。

 町は旧ソ連の誇る宇宙計画の栄華の舞台となったバイコヌール宇宙基地(Baikonur Cosmodrome)と共に建設され、当初「サイト10(Site No. 10)」と呼ばれた。やがて革命指導者ウラジーミル・レーニン(Vladimir Lenin)にちなんでレニンスク(Leninsk)と名付けられ、後に宇宙基地の名を取ってバイコヌールに改名した。

 約30キロ離れた宇宙基地からは、1957年に世界初の人工衛星「スプートニク(Sputnik)」が打ち上げられ、ユーリ・ガガーリン(Yuri Gagarin)が人類初の宇宙飛行へと旅立った。ワレンチナ・テレシコワ(Valentina Tereshkova)が女性として初めて宇宙へ向かったのも、ここからだった。

 旧ソ連崩壊から30年がたった今も、バイコヌールは特に国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行の主要基地として現役だ。8日には、実業家の前澤友作(Yusaku Maezawa)氏ら日本人観光客2人がISSへと飛び立った。「全て、世代を超えて多くの仕事をしてきた人々の功績だ」とムタリエフさん。

 シルダリヤ川(Syr Darya River)のほとりに1955年、旧ソ連が宇宙基地建設に携わる労働者の拠点を建設したのが町の始まりだ。その後、宇宙開発に従事する軍人とその家族の暮らす町として拡張されていった。

 教師のオクサナ・スリビナ(Oksana Slivina)さんは「いわゆるエリートがいた頃を覚えている。高等教育を受けた人たちがたくさんいた」と話した。スリビナさんも、父親が軍の仕事でこの町に赴任したため引っ越してきた一人だ。