【12月9日 AFP】インド南部で21人の命を奪い、地元住民をおびえさせていた野生のゾウが捕獲されて訓練を受け、村を襲う他のゾウを撃退するまでになっている。地域では、森林伐採によって飢えたゾウが村を襲撃する例が相次いでいる。

 58歳になる雄のゾウ「ムールティー(Moorthy)」は、ケララ(Kerala)州で11人を踏み殺した。当局は射殺命令を出したが、ムールティーは州境を越え、隣のタミルナド(Tamil Nadu)州に逃げ込み、さらに10人の命を奪った。

 だが、タミルナド州当局はゾウに危害を加えることを禁止しているため、ムールティーは1998年に同州テッパカドゥ(Theppakadu)にあるゾウの飼育・訓練施設「エレファント・キャンプ」に入れられた。

 ムールティーを訓練しているキルマランさん(55)は、「ムールティーを訓練し始めてかなりたちますが、純真な子どもみたいで、誰かを痛めつけるようなことはしません」と語った。

 子どもが近づいて一緒に遊んだり抱き付いたりしても、絶対に傷つけることはないという。

 テッパカドゥにある施設は1927年に設立され、エレファント・キャンプとしては国内最大だ。

 ここでゾウは、人間の力仕事を手伝うための訓練を受ける。重さ150キロくらいまでの荷物を運べるゾウは貴重な労働力だ。

 しかし、周辺の村落にとって、キャンプで飼育されているゾウの最も重要な役割は、たびたび村を襲うようになった野生のゾウを撃退することだ。野生のゾウは食べ物を求めて集落に入り込み、住民を不安に陥れる。

 テッパカドゥ・キャンプ周辺に住む女性は、「野生のゾウが村に入って来ると、子どもたちは危険にさらされます」と話した。 

 テッパカドゥ・キャンプのゾウは、マフート(ゾウ使い)と力を合わせながら、集落にやって来る野生のゾウに立ち向かって追い払う訓練を受ける。