【12月5日 AFP】アフガニスタンの実権を掌握したイスラム主義組織タリバン(Taliban)が投降した前政権の治安要員を「即決処刑」したとする報告を、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が先月末に公表した。これを受けて米国務省は4日、日本など西側各国と共同でタリバンを非難する声明を出し、早急な調査を求めた。

 HRWの報告によると、アフガン全土がタリバンに制圧された8月半ばから10月までに「タリバン部隊に投降もしくは拘束された」アフガン国家治安部隊(ANSF)の元隊員ら47人が即決処刑されたか、強制失踪の状態にある。47人には軍人や警察官、情報機関員経験者らが含まれるという。

 米国務省は声明で「HRWなどから報告のあったアフガン治安部隊の元要員の即決処刑や強制失踪について、われわれは深い懸念を表明する」と述べ、「深刻な人権侵害であり、タリバンが宣言した(前政権関係者への)恩赦と矛盾する」と指摘。タリバンに「全国の全部隊で」恩赦の方針が堅持されるよう求めた。

 声明は「報告された事例については早急に、かつ透明性のある方法で調査する必要があり、関与した者には責任を取らせなければならない。また、新たな殺害や失踪に対する即効性のある抑止力となるよう、こうした措置は明確に公表されなければならない」と主張。「われわれは引き続き、タリバンをその行動で評価する」とした。

 共同声明には、米国のほか、欧州連合(EU)、英国、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ルーマニア、ウクライナなどが名を連ねた。

 HRWの報告によれば、タリバン指導部は投降した元治安要員に対し、当局に登録して軍や特殊部隊などの所属・関係先について審査を受け、身の安全を保証する書類を受け取るよう指示した。実際には身元審査を利用して、登録から数日のうちに元治安要員を拘束し、即決処刑や強制失踪を行っていたとされる。処刑された遺体は、親族や近所の住民が発見しやすいよう遺棄されていたという。(c)AFP