【1月9日 AFP】犬の鼻はとても複雑だ。犬は鼻で周囲の状況を認識し、つがいの相手や餌を見つけ、そして危険を避ける。

 鼻には鼻中隔で仕切られた二つの鼻腔(びくう)がある。人間ではにおいを嗅いだり呼吸をしたりするのに同じ鼻腔が使われるが、犬の場合では、鼻孔のすぐ内側で吸気の行き先が分かれる──酸素が向かう肺とにおいを感知する嗅覚領域だ。

 嗅覚領域には嗅覚受容体が集まっている。人間には約600万個の嗅覚受容体があるが、犬には約3億個ある。閉め切った部屋で香水のにおいを感知できる人間に対し、犬は競技場の広さでも同じにおいを感知できるのだ。

 また犬の二つの鼻腔はそれぞれ独立して機能するため、においを「ステレオ」で感じることが可能となっており、においの発生源を突き止める際に役立つ。

 人間の呼吸では、鼻孔を使って息を吸ったり吐いたりするが、犬の場合は、排気のみ鼻の横にあるスリット(切れ目)で行われる。そのため吸気と排気が混ざることがなく、常時においを嗅ぐことが可能となる。

 さらに、においの情報を処理する際に使われる脳の部位は、犬の方がその割合が人間の約40倍大きい。

 犬の鼻はとても敏感で、怒りやストレス、苦痛の他、糖尿病や皮膚がんなどの疾患も感知することができると考えられている。

 麻薬や爆発物の探知で長きにわたり活躍してきた犬。地震やビル倒壊などの災害時にも、救助隊の重要な一員として欠かせない存在となっている。(c)AFP