■張り子のトラと鉄のトラ

 中国が経済発展を続ける中、張氏は、資源を乱用し、無許可で事業を行って環境を汚染する企業を糾弾し始めた。賛同を得られず、苦労することも多かった。

 自治体は、地元の環境を守ることには消極的だったと張氏は言う。

「なぜかというと、地元の企業と癒着していたからです」

 張氏の湖畔の自宅には、自身の活動に関する書類や報告書が床から天井まで積み上げられている。

 張氏によれば、閉鎖まで持ち込んだ工場は200以上に上る。だが、ただでは済まなかった。

 地元の企業幹部から鉱山・採石場の所有者まで、「その多くに張さんは憎まれています」と周光文(Zhou Guangwen)氏(68)は話す。自身の採石場は張氏の告発を受けて20年前に閉鎖され、投資した資金もすべて失うことになったが、現在は張氏の環境保護活動に理解を示し、親しい間柄になった。

 2002年、張氏は未登録のトラックにはねられて片腕を骨折し、視力がかなり低下した。違法の採石場に関する証拠を集めていた最中だった。

 張氏は故意の事故だったと信じている。襲撃されたのは一度や二度ではない。

「殴られ、痛めつけられ、自宅を壊され、畑も奪われました」とAFPに語った。

「怖くはありません。連中は張り子のトラ。私は鉄のトラです」

 張氏は、2009年に中国国営テレビの「感動中国」という番組で「真の環境大使」として表彰された。今は、やっと人に話を聞いてもらえるようになったと話す。

「2000年代半ばから、中国の水質汚染問題は転機を迎えている」と環境問題専門家の馬軍(Ma Jun)氏は言う。

 20年ほど前は、水質が最低等級を下回っているという報告が全国の水質観測所の4分の1から上がっていた。馬氏によれば、その頃からの連携した取り組みが功を奏し、2020年は最低等級以下の水質報告は1%に満たなかった。

 しかし、400キロ離れた長江(Yangtze River)から滇池に水を引き込む計画の達成には何年もかかる。生態環境省の今年の報告によると、処理場はあるが、いまだに年間1億4000万立方メートルの汚水が滇池に流れ込んでいる。

 張氏は闘いをやめるつもりはない。

「引き返すことはできません」と張氏は言う。「私は1本の丸木橋の上を歩いています。死ぬまでこの道を歩き続けます」

 映像は10月20、21日撮影。(c)AFP/Patrick BAERT